緋山酔恭「B級哲学仙境録」 仏教編 仏教と偶像崇拝について



B級哲学仙境論


仏 教 編


 




仏教と偶像崇拝




仏 像



真理(法)をよりどころにしなさいというのが

釈迦の遺言なので


仏教では当初、釈迦の図像や彫刻はつくられず



「菩提樹」

(釈迦の悟りを表現)



「法輪」

〔 武器のチャクラ(輪)が象徴化されたもので

釈迦の説法が衆生の迷いを破り

車輪を転がすように人から人へと伝わってゆくことを表現 〕



「ストゥーパ」

(仏塔)



「足裏」

〔仏が備えている32の勝れた身体的特質である三十二相に

足裏は全体が地についてすきまがなく(扁平足)

両方の足裏には

千本の矢が放射状に組み合わさった形の

千輻輪(せんぷくりん)の肉紋が二輪ある(足下二輪相)とされる〕



「傘蓋」

(さんがい・行道のとき導師にさしかける傘)



「金剛座」

(獅子座。釈迦の座す台座)


などによって、釈迦を象徴的にあらわしていたされます





ストゥーパの音写が、卒塔婆(そとうば・そとば。塔婆)で

塔はその略です


三重塔や五重塔は、ストゥーパが

中国や日本に伝わる過程で誕生したものだといいます




卒塔婆は、日本では

墓の側に立てる梵字や経文や戒名などが書かれた細長い板で

上部に塔形の切り込みがあるものをさすようになっています


近世以降、墓地に卒塔婆を立てる塔婆供養の風習が生まれますが

これは、起塔供養の簡略化だとされています





1世紀中頃から2世紀にかけて

ガンダーラ(パキスタン北西部のペシャワール地方の古名)で

初めて仏像がつくられますが


それ以前は、仏教でも偶像崇拝は行われず

釈迦の舎利〔遺骨。なお、遺骨を生身の舎利に対し

釈迦の遺した教法や経典を法身の舎利という〕を

納めたストゥーパや

釈迦の聖跡を示すためにつくられたストゥーパが

崇拝の中心であったようです




2世紀初頭には、マトゥラー〔インド北部。古代インド16大国の1つ

クリシュナ(ヒンズー教の最高神 ビシュヌの権化)の生誕の地として

ヒンズー教の聖地。またジャイナ教の中心地でもある〕

でも制作がはじまったそうです



ガンダーラの仏像は、ギリシア・ローマ美術の影響をうけ

西方的な特色をもつのに対し

マトゥラーのものは純インド的仏像だといいます




   
 ガンダーラの仏像  転写   ガンダーラの仏像 転写



 




   
 仏陀立像  転写   マトゥラーの仏像







卍(万字)とハーケンクロイツ



インド諸宗教で、吉祥や美徳を象徴する印

仏教では、釈迦の胸や足裏にある瑞相(巻き毛の形)とされている



 
 
下に須弥山が見られ

わらびみたいのは雲

そのとなりは太陽


3つの三角形は

三宝(仏・法・僧)を表わすという






千輻輪相(せんぷくりんそう)は

仏の足の裏にある千の輻(や)が輪状になった紋様

仏の「三十二相」(仏のもつ32の優れた特徴)の第二

ちなみに、第一が偏平足、第三が指が長いです


悟りを得たあとの

釈迦の最初の説法を「初転法輪」(しよてんぽうりん)

というように


初期の仏教では

教えを説くことを車輪を転がすことになぞられ

釈迦の徳を表わす





ヒンズー教では、左卍は和、右卐は力を意味する

というように左と右とで違った意義付けをしている



サンスクリット語では、スヴァスティカといい

中国には仏典を通して伝わり

鳩摩羅什(くまらじゅう)や玄奘(げんじょう)はこれを「徳」で訳した



則天武后の693年に

吉祥萬徳の意味から、卍を萬と読むことが定められ

卍が漢字として使用されることになったという


万は、卍または卐から字の変化により誕生したという



左卍と右卐があり、日本ではもっぱら左卍が用いられる

日本では、寺院の象徴として地図記号にも使用される


家紋にも用いられ

徳島藩主 蜂須賀氏の家紋が卍であったことから

阿波踊りでは、卍をあしらった浴衣がよく見られる



ヒンドゥー教の最高神 ビシュヌの胸にある

巻き毛が起源だとされるが実際にはもっと古く


古代のインド・ヨーロッパ語族の言葉を話す民族に

共通する宗教的シンボルであったようである


かつては、東西問わず幸福のシンボルで

ヨーロッパでは十字架の1種となっている





ナチスの「ハーケンクロイツ」〔鉤(かぎ)十字と訳す〕は

右鉤で、ナチ党の党旗に描かれ

1935~45年にはドイツの国旗にも用いられた


ナチスは、万字を

インド・ヨーロッパ語族の言語を話すアーリア人の象徴とした


現在では、ほとんどのヨーロッパ諸国で右卐・左卍に関わらず

法律によって使用が禁止されている


特にドイツではハーケンクロイツの使用が完全に禁じられていて

学術的な目的以外で、公の場で使用すると逮捕される


2007年には、卐に禁止マークを重ねたり

卐がゴミ箱に突っ込まれているなどといったイラスト

反ナチ意識高揚のためのイラストでの使用が容認された









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