カースト制度 バルナ カーストとは 家柄や血統を意味するポルトガル語カスタ (語源はラテン語のカヌトゥス)に由来する英語だといいます カースト制度は、バルナ(種姓・四姓)という枠組みから 後世に成立したものです バルナとは、バラモン(聖職者)、クシャトリア(王族・貴族・武士) バイシャ(庶民)、シュードラ(奴隷)という身分制度です つまり日本ではバルナをカースト制度と呼んでいるのです 本来のカースト制度は ≪バルナ≫と≪ジャーティ≫で構成されています ≪ジャーティ≫の数は細分化されて2千から3千にも及ぶそうです バルナとは、本来 色を意味し 先住民と征服民であるアーリア人の皮膚の色の 違いをあらわす言葉だったといいます バルナの誕生は 後期ヴェーダ時代(前1千年~前600年頃)とされています バラモンは、他者のために祭祀を行い ヴェータ(バラモン教の聖典)を教授して布施を受ける身分 クシャトリアは、政治や戦闘を仕事とし 人民の生命を保護する身分 バイシャは、農業、牧畜、商業 金融業に従事する身分 シュードラは、奴隷的労働者や 手工芸に従事する身分 上位の3バルナは再生族といって 男子は10歳前後になると入門式を行い アーリア人社会の一員となり ベーダの祭儀に参加する資格が与えられるのに対し シュードラは一生族といい 入門式をあげることは許されていないそうです バルナの制度は マヌ法典などによって理論化されていったようです ● マヌ法典 原型は前200年から後200年頃に成立したという 宇宙のはじめ・万物の創造からはじまり 人間が一生を通じて行う通過儀礼 先祖の祭祀、四住期 日々の生活、輪廻・業・解脱について 国王の義務 〔王は法をつくらず保護し、法に従って政治をする者であるとして 立法についてバラモンの関与を説く〕 さらには婚姻法、相続法、裁判の手続きなどを記述している バラモンの特権を擁護する立場から バルナ〔バラモン(聖職者)、クシャトリア(王族・貴族・武士) バイシャ(庶民)、シュードラ(奴隷)というカースト制度の根幹〕 による差別をいたる所に述べ 宗教の聖典としての性格が強い なお、マヌ法典はマヌが述べたものだとされる マヌは、ブラフマー(仏教に取り入れられ梵天となった)と サラスバディー(仏教に取り入れられ弁財天となった)の子で 旧約聖書のノアの箱船のノアにあたる人 ヴェーダのブラーフマナにその神話がある マヌが養い大きくして海に放した魚が 大洪水がきて人類が滅亡することを予言する マヌは舟に乗り、魚の導くままヒマラヤに着く マヌ以外の人類は滅亡したが マヌは苦行と祭祀によって1人の女性を得 2人で人類を再生させたという ● バルナ バルナはもともと リグ・ヴェーダ時代(最初のヴェーダ)の バラモン教では重要な神です 司法神です 「リタ」(天則・天の運行から、祭祀、人倫まで貫く宇宙の法則 神も人間もこれを守る)を守護する神です 多くのスパイを使い人間を監視し リタに背く者に罰を与え、脱水病にする 悔い改めた者には慈悲深いといいます 後代には単に水神や海上の神となっています 密教に水天(水界の主)として取り入れらました 不可触民 ガンジーが不可触民(ふかしょくみん)を ハリジャン(神の子)と呼び、一時、彼らの部落で暮らし 解放運動を行ったことは有名です 不可触民というのは、バルナの枠からもはずされた者で アウトカーストとかパンチャマ(第5のバルナに属する者の意) とも呼ばれたといいます 道元、栄西、法然、親鸞といった鎌倉仏教の教祖は それぞれ公家、神官、役人、貴族の子でしたが 日蓮は、安房の国小湊(こみなと)の漁夫の子として生まれています 日蓮は御書で 「日蓮今生(こんじょう)には貧窮下賎(びんぐげせん)の者 と生まれ栴陀羅(せんだら)の家より出(いで)たり」 と述べ、自らの出自を誇っています 栴陀羅とは梵語のチャンダーラのことで チャンダーラとは、暴悪、悪人、屠者(としゃ) 殺者などと訳されるそうです これが不可触民です 触れてはならない者として 歩くときは鈴をつけたり 竹を打ち鳴らして存在を知らせることが 義務づけられていたといいます インドでは業・輪廻の思想から カーストが過去世から来世まで カルマ(業)として受け継がれると考えられ カーストによって職業が決定されたり 異なったカースト間での婚姻、食事をとることなどが 禁止されることになったといいますが とりわけひどい話は 触れるとカーストが伝染するとされたことです なので上位のカースト者に触れた低位のカーストの者が その場で殺害されることもあったといいます 時代が下がるに従い、バイシャは商人のみ シュードラは農業、牧畜、手工業者を意味するようになったのに対し 不可触民への差別はむしろ強まっていったといいます 不可触民の起源は、日本の穢多(えた)や非人と同様 農耕社会の周辺で、狩猟や採集生活を送っていた人たち また屠殺や死体の処理、革のなめしなどといった 賎業とみられる傾向にあった職業を営んでいた人たちだといいます 皮革加工のジャーティ、糞尿清掃のジャーティ、洗濯屋のジャーティ 屠殺のジャーティ、道路清掃のジャーティ、理髪店のジャーティなど 今日では、彼らの指定カースト=ジャーティの数は 400~500に及ぶとされ インドの人口の約15%を占めるといいます 不可触民かどうかの判定は バラモンより祭祀を受けられるか ヒンズー教寺院に立ち入ることができるか 身体の接触や接近が上位のカースト者のけがれにならないか 道路・井戸・渡船・学校などの公共施設が利用できるか さらに、床屋、水運び、洋服の仕立てなどといった サービスが受けられるかどかか などが基準となっているようです 例えば、上位のカーストの者は2週間に1回 中位のカーストの者は1ヶ月に1回 低位のカーストの者は2ヶ月に1回の割合で 洗濯のサービスを受けられるとか 床屋は、上位のカーストに対しては週に1回 その他の客には適当な日を選んで顔を剃りに出向く などというように 受けられるサービスが身分によって 決められているといいます 但し、1998年に大統領に選出され2002年までつとめた ナラヤナンという人は、不可触民の出身で 外交官、国会議員を経て大統領になったといいます 彼が大統領に選出されたことは 世界的な事件として注目を集めたそうです インドの大統領は 首相の任免権や内閣の助言のもとでの行政権 軍の最高指揮権をもつものの 実質的な権力は首相がもつそうですが インドの社会も大きく変わってきているのです ジャーティ ジャーティは、本来「生まれ」という意味だといいます 職業、信仰、種族、血統 経済力などの違いで誕生した社会集団で 内婚(集団の内部から結婚相手を 見つけなければならないという制度) 集団として機能しているといいます また、特定の職業と結ばれていることが多いといいます 最上位のジャーティは バラモンで 伝統的な職業は、祭祀やヴェーダの教師です 奴隷身分のシュードラは 花作り、野菜作り、米作り 大工、床屋、水運び、羊飼い、仕立屋、陶器職人 油搾りなどを職業とするジャーティに属しています また、異教徒であるイスラム教徒は、不可触民として 乞食、ガラスの腕輪売り、踊り子などを職業とする ジャーティに属しているようです 但し、憲法に職業の自由が保障されたことから 職業を世襲せずに都市へ出る者が多くなり 近年ではジャーティと職業の結びつきは緩んでいるといいます カーストが維持される理由 どうしてこんな制度が維持されるのか? 古代には、釈迦や、ジャイナ教のヴァルダマーナなど 反バラモンの自由思想家たちが 身分制度に反対し、その後も改革運動は起きているそうです しかし、ヒンズー教では それぞれのカーストに生まれたのは 前世の行いによるものだから 自分のカーストの職業に専念することが必要で それにより来世において幸福を得られると説くのです こうした因果応報的な教えが カースト制度の維持に大きく貢献してきたと言えるようです また、ジャーティは 先祖代々からの得意先の仕事をする権利をもつので 先祖からの職業に従事していれば最低の生活は保障される といった事情なども指摘されています ● アーシュラマ 住期・四住期と訳される バラモン教、ヒンズー教の法典が規定する シュードラを除く上位3バルナの男子に適用される人生の区分 なお、奴隷身分のシュードラは ヴェーダを学ぶことさえ禁止されている 1、師のもとでヴェーダ聖典を学習する学生期(梵行期) 2、家にあって子をもうけるとともに家庭内の祭式を主宰する家住期 (子孫を残すのが一つの理想とされている) 3、森に隠棲して修行する林棲期 4、一定の住所をもたず乞食(こつじき)遊行する遊行期 古代インドにおいては ダルマ(宗教的義務)、アルタ(財産) カーマ(性愛)が人生の三大目的とされていて ウパニシャッドの成立以降は 「解脱」が加わり、人生の四大目的となる ダルマ(宗教的義務)、アルタ(財産) カーマ(性愛)という人生の三大目的と 瞑想や苦行などの実践によって達成される 「解脱」では矛盾がある。両立しない そこで、人生における時期を設定することによって 矛盾を解消しようとしたのが 住期(アーシュラマ)ではないかとの考えがある 但し、この制度が、実際的にどこまで 忠実に行われてきかは疑問とされている 穢多・非人と同和問題 |
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