生命の起源から 多細胞生物の誕生まで 生命の起源 地球は、当初3000℃もあって 生命が存在できる状態ではありませんでした では、最初の生命はどこからきたのか? そこで、隕石にくっついてきたという渡来説があるわけです とはいえ隕石が地球に到達するさいは1000℃を超えるといいます これもちょっとムリがありそうです 生命の起源については、宇宙飛来説の他には、DNAワールド仮説 RNAワールド仮説、プロテインワールド仮説というのがあるようです 原始生命体が誕生する以前、〇〇の世界があったという仮説です 〇〇の世界から原始生命体が誕生したということになります 〇〇の世界が、原始生命体に至るために、着目されているのが 「自己を複製する能力」です DNAワールド仮説、RNAワールド仮説 プロテインワールド仮説のうち 一番有力なのがRNAワールドで、次ぎがプロテインワールドで DNAワールドは根拠が薄いとされています ① プロテインワールド仮説は タンパク質がはじめに存在し RNAやDNAはそのあとつくられていったという仮説です そのうちの「GADV仮説」 〔Gはグリシン・Aはアラニン・Dはアスパラギン酸・Vはバリン〕 によると 最初に、比較的単純な構造を持つ グリシン、アラニン アスパラギン酸、バリンという4つのアミノ酸が誕生したといいます これらは実験において 無機物から容易に合成されることが分かっているそうです そして、これら4種類の水溶液を繰り返し蒸発させると 4種類のアミノ酸が中心となって ランダムに結合しただけのタンパク質ができるそうです GADV仮説はこうしたことを根拠に 4種類のアミノ酸がつながったタンパク質は 正確な複製ではないが、自身と似た分子をつくることを開始し 細胞膜を獲得し、RNAを獲得して さらに高度なタンパク質を合成するようになっていった と主張されるるようです プロテインワールド仮説が支持されるのは 酵素(触媒作用をもつタンパク質)が あらゆる生命反応に関係していて、生命体には不可欠であること RNAやDNAが4種類の塩基の組み合わせでできているのに対し タンパクは20種類のアミノ酸の組み合わせでできているので より多種多様なものを作り上げることができること だといいます ちなみに、酵素(エンチーム)とは 動植物からカビ、細菌にいたるまでの全ての生物が持っていて 触媒作用(自らは変化せず他のものの化学反応を促進させる)を通じ 呼吸、筋肉の動き、代謝、排泄などあらゆる生理作用に関係している物質です 我々の肝臓だけでも5000種以上の酵素が存在するとも言われています 逆にプロテインワールド仮説の欠点は ランダムに結合したアミノ酸から特定の酵素が 自然に出来上がるとは考えにくいこと などがあげられていて 反対派からは 「サルが適当に打ったタイプはシェークスピアとなるか?」 とひにくられます 宇宙の年齢と同じくらい時間をかけても そういったことが起こる見込みはないという批判です なお、狂牛病(牛海綿状脳症)や クロイツフェルト・ヤコブ病の原因は プリオンという自己増殖するタンパク質です 「狂牛病はウイルスでも細菌でもない プリオンという未知の感染性タンパク質によって引き起こされる」 と発表された当初、多くの科学者は全く信用しなかったらしいです 生体には、正常型プリオンタンパク質が発現し 何らかの生理機能を有しているそうですが これに対し 異常型プリオンタンパク質が 5分子以上凝集すると感染性を有するようになり 14から28分子の異常型プリオンタンパク質から構成される プリオンが最も感染性が強いといいます プリオンは、正常型プリオンタンパク質を異常型に転換し 取り込んでいく形で増殖していくらしいです ② 一番、有力なRNAワールド仮説は 最初に、細胞膜のようなものに包まれたRNAが 有機物が生成されるような高濃度の海に浮遊していた そして、このようなRNAからDNAができ タンパクを合成するようになったのではないかというものです この説の根拠は タンパク質は遺伝情報を保存できない DNAは触媒作用を持たない これに対しRNAは遺伝情報も保存でき 触媒能力も持っているというところにあるそうです 生物は、DNAという設計図のデータをいったんRNAに写しとり それをもとにタンパクを合成して体を作り上げています タンパク質は、DNAやRNAがないと作ることはできませんが また、DNAやRNAも、酵素(タンパク質)がないと作れないのです するとタンパクが先か、DNAやRNAが先か 鶏と卵みたいな話になっちゃうわけです ところが、RNAの中に 酵素と同じく触媒の働きをするリボザイムという種類が発見され この仮説が有力になったといいます 生物体内の化学反応はほぼ全て酵素反応である このためかつては生体反応の全てを 酵素が制御していると考えられていました ところが近年、リボザイムという種類のRNAは、触媒として働き RNAを切断したり、連結したりしていることが明らなりました つまり、RNAは遺伝情報物質として働くだけではなく それ自身が触媒として働く=自分を編集する 能力を 持つことが、判明したということです ③ DNAワールド仮説はこんな↓感じなものです DNAは、熱をかけると二重らせん構造がほどけて 2本の1本鎖のDNAとなる性質と 冷ましてやると再び2本鎖のDNAに戻る性質を持つそうです そこで、ふやしたい部分のDNA(鋳型)と 十分な量の2種類のDNAの断片(プライマー)と DNAポリメラーゼという酵素を容器に入れます そして96度くらいの高温にすると 鋳型の2本鎖DNAが、1本鎖の2本のDNAになる → これを55度くらいまで下げると 2種類のプライマーがそれぞれ 1本鎖になった鋳型DNAと塩基対を形成する→ 温度を72度くらいまで上げると DNAポリメラーゼが、プライマーからDNAを合成する 〔 鋳型DNAの一部がプライマーと塩基対を形成すると ポリメラーゼによって、鋳型DNAの残りの部分と対をなすように プライマーが伸びていき2本鎖のDNAとなる これによって、もともと1本の2本鎖のDNAから 2本の2本鎖のDNAが作られたことになる 〕 こうした実験によって 自己を複製するだけなら RNAがなくても可能であることを証明でたわけです なお、最初の生命の誕生は40億年前で その場所は350℃以上の熱水が吹き上げ 猛毒の硫化水素が流れ出している 海底熱水噴出孔であるという説が有力ですが 「プライマーがたくさんある状況で、温度変化さえあれば DNAはどんどん増殖していく。熱水噴出孔のそばでは温度が高く 離れたところでは温度が低い 水が循環していれば、熱変化のサイクルができる こうして原始生命体は、DNAワールドから誕生した」 というのがこの仮説の主張です 但し、DNAが、酵素=タンパク質の触媒能力がないと 自己複製できないというところに大きな欠陥があります ● DNAの遺伝情報 DNAの遺伝情報は アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T) の4種類の塩基という物質によって示されているといいます つまり人体を設計するDNAという長いテープには A、C、G、Tの4種類の塩基が並んでいるということです このテープは じつはアミノ酸のつながり方を記したものに他なりません つまり3つの塩基で1つのアミノ酸をあらわしているわけです これを3文字暗号といいます 塩基は4つあるので 4×4×4の64の暗号をつくることができるわけですか タンパク質を構成するアミノ酸は20種なので 暗号も20種あればよい なので64は充分な数ということになります この3文字暗号によって 10万種類ものタンパク質がつくられているといいます そしてタンパク質が、人体の大部分をつくっているということです また、遺伝子は、酵素を含む全てのタンパク質の情報を持ちます 酵素は、触媒作用 (自らは変化せず他のものの化学反応を促進させる)を通じ 生体にとって必要な物質を合成する代謝反応を制御しているので 結局、遺伝子が全ての生体の活動を制御していることになるのです タンパク質の合成 仕組みは、ほとんど全ての生物で共通していて 「タンパク質をつくれ」というDNAからの指令を受けて RNAが働くことで、タンパク質は合成されているそうです この遺伝情報が DNA→RNA→タンパク質へと一方向に伝えられる仕組みを 「セントラル・ドグマ」といいます RNAの働きは、DNAの役割が遺伝情報の保存であるのに対し その実体化、つまりタンパク質を合成することにあます まず、長大なDNAの情報のなかから 現在合成しなければならないタンパク質に 必要な情報だけを写し取る=1本の鎖のメッセンジャーRNA (伝令RNA)が作られる この工程を「転写」といいます RNAは1本の鎖のらせんです DNAの2本の鎖のうち どちらか一方の鎖の一部がRNAに転写(コピー)されます 転写はRNA合成酵素(RNAポリメラーゼ)の働きにより行われます DNAがRNAへ転写されると DNAでT(チミン)であった塩基が すべてU(ウラシル)に置き換えられます このメッセンジャーRNAが核孔より出て 細胞質にあるリボゾームという粒子(細胞小器官)に入ります リボゾームは、メッセンジャーRNAの3文字暗号にしたがって アミノ酸をつなげてゆくタンパク質合成装置です アミノ酸は、トランスファーRNA(転移RNA・運搬RNA)が リボゾームへと運んできます トランスファーRNAは 遺伝暗号の種類に相当するくらいの種類があり それぞれの種類が、決まったアミノ酸と メッセンジャーRNAの3文字暗号に対応するように出来ているそうです つまり、あるアミノ酸に結合する部位と そのアミノ酸を意味する3文字暗号に対応する部位を持つわけです トランスファーRNAも、核内で作られるようで そこから出て、それぞれ決まったアミノ酸に結合しておいて リボゾームへ入り、メッセンジャーRNAの情報(3文字暗号)にしたがって アミノ酸を並べていくそうです この工程を「翻訳」といいます つまり、アミノ酸自身は、自分を表す暗号を読めないため トランスファーRNAが通訳の役割を果たしているわけです リボゾームでは、メッセンジャーRNAによって 定められた遺伝暗号の順に トランスファーRNAがアミノ酸を並べ ペプチド〔アミノ酸が2個以上100個くらいまでつながったもの なおタンパク質はそれ以上つながったもの〕結合され こうして合成されたペプチドは、いくつもの酵素の働きによって 一部が切断されたり、糖鎖がついたり 様々な生化学的な加工がなされ、完成したタンパク質になるそうです なお、ウイルスは、カプシドというタンパク質の殻に 核酸(DNAまたはRNA)を持つだけで エネルギーをつくりだす機能も タンパク質を合成するリボゾームという器官もません なので、動物、植物、昆虫、細菌といった 生物の細胞に侵入し その細胞のリボゾームを利用して タンパク質を合成して増殖しているのです 現在の科学の世界では 「ウィルスは生物ではない」というのが共通認識になっているようです ● レトロウイルスについて 時間が、現在→過去へは流れることはない というのと一緒で 遺伝情報の流れは DNA→RNA しかない RNA→DNA はない ということから「セントラル・ドグマ」と呼ばれています ところが19700年、テミンとボルティモアという 2人のアメリカのウイルス学者が ぞれぞれ独立的に RNA→DNA もあることを発見した (レトロウイルスを発見) → ノーベル医学生理学賞を受賞 ウイルスでは遺伝物質が DNA(デオキシリボースという糖、リン酸 塩基からなるデオキシリボ核酸)ではなく RNA(リボースという糖、リン酸、塩基 からなるリボ核酸) のものもいて この場合、塩基の1つは、チミンではなくウラシル(U)となるが 3文字暗号のしくみは、人間からウイルスまで同じといいます ① RNAウイルス RNAウイルスは、2本鎖のRNAウイルスと 1本鎖のRNAウイルスに分けることができ さらに1本鎖のRNAウイルスを +鎖型と-鎖型に分けることができる 一本鎖の+鎖RNAウイルスは ゲノム自体(遺伝情報のすべて=RNAがそのまま) がメッセンジャーRNAとして機能する -鎖RNAウイルスのゲノムは そのままではメッセンジャーRNAとして機能できない このため自身の酵素により+鎖に転写して メッセンジャーRNAとして機能するとして機能する ② レトロウイルス レトロウイルスは、RNAウイルスの中で 逆転写酵素(RNA→ DNAをつくり出す酵素) を持つ種類の総称 核酸は、一本鎖RNAの+鎖である レトロウイルスは、RNAから転写により、-鎖DNAを合成する つぎに合成した-鎖DNAから転写により+鎖DNAを合成する これにより-と+の2本鎖DNAに変換される このウイルスの作り出した2本鎖DNAが 宿主細胞(例えば、ヒトの細胞)のDNAに組み込まれる DNAウイルスや、ふつうのRNAウイルスの遺伝情報は 宿主細胞の核に侵入することはない メッセンジャーRNAをつくり、これが リボゾームに侵入し、自身のタンパク質をつくり、増えていく これに対し、レトロウイルスは、逆転写酵素でつくった自身のDNAを 宿主細胞(ヒト)のDNAに組み込んでいく 変化した宿主のDNAは、メッセンジャーRNAをつくって タンパク質を合成するわけですが ヒトに必要なタンパク質でなく、ウイルスタンパク質を合成していく こうしてウイルスが増殖していき つぎつぎに宿主の細胞のDNAを変化させていく エイズの原因となるレトロウイルス(=エイズウィルス)も 逆転写酵素によってつくったDNAを ヒト細胞のDNAに組み込み ウイルスを増殖させ、別の細胞のDNAを次々と破壊していく 免疫システムで司令塔の役割を果たしている T細胞が破壊されると、免疫不全を引き起こす かつては、死の病 だったのですが 最近は、死なない病気になりました 調べてみると 抗HIV薬は、大きく「逆転写酵素阻害薬」「プロテアーゼ阻害薬」 「インテグラーゼ阻害薬」「CCR5阻害薬」に分けられるそうです 「CCR5阻害薬」以外は、ウイルスの酵素の働きを阻害する薬です そもそも どうやって酵素を阻害するのか? 調べてみると 酵素阻害剤は、酵素分子に結合して その活性を低下または消失させる物質のことだそうです なお、酵素に結合する物質すべてが酵素阻害剤というわけではなく 逆に活性を上昇させるもの(酵素活性化剤)もあるそうです ① 「プロテアーゼ阻害薬」 プロテアーゼとは、タンパク質分解酵素 ウイルスは、感染した細胞に作らせたタンパク質を 適当な大きさに切断(分解)し、これを組み立て子孫の身体をつくり 増殖していくのであるが、切断を無効化する ② 「インテグラーゼ阻害薬」 インテグラーゼとは、ヒトDNAを切って その切れ間にウイルスDNAを組み込み酵素 ③ 「CCR5阻害薬」 ウイルスが細胞に侵入するには ウイルスの突起(カギ)と、細胞の受容体(カギ穴)とが 結合する必要があるが この阻害薬は、カギ穴に結合することにより ウイルスの結合邪魔をする ● DNAと染色体 DNAは デオキシリボースという糖、リン酸、塩基からなる ヌクレオチドが多数つながってできています 以下の画像は、転写 DNA分は、とても細長い(約2m)ので もつれるのを防ぐために ヒストンという筒状のタンパク質に巻き付いて ヌクレオソームという数珠玉をつくり このヌクレオソームがたくさん折り畳まれた クロマチン(染色質)という細い紐として存在します このクロマチンが細胞分裂ときに、凝縮して 顕微鏡で観察できる大きさになります これが染色体です 染色体という名は、顕微鏡での観察用の色素に 染まりやすいことからつけられたといいます 簡単にいうと DNAのテープが折りたたまれたものが、染色体と言えます 以下の画像は、転写 また、DNAと遺伝子の違いは DNAには、遺伝情報をもっている部分と もっていない部分が存在し 遺伝情報を伝える領域を遺伝子と呼ぶそうです 生命の誕生 どのようにして生命は誕生したのでしょうか? 彗星や隕石に生命の起源を求める人もいます 【 隕石には、固体炭素と鉄、ニッケルが多く含まれている 地球の大気には窒素ガス、海には水が豊富に存在している 隕石の海面への衝突の衝撃によって 大気の窒素を含めた化学反応がおき 生命のもととなる有機物分子がつくられたという説 】 とはいえ、有力視されているのが 海底火山の噴出孔付近で誕生したという説です 海底熱水噴出孔とは、350℃以上の熱水が吹き上げ 猛毒の硫化水素が流れ出しているらしく 深海にあり大きな圧力(水圧)をうけているので 沸騰はしていないといいます そこで、メタン、アンモニア、硫化水素などから アミノ酸などの有機物誕生し ある種の有機物質が生命に進化したという説です 有機物が生命へと進化したプロセスには コアセルベート説などが知られていますがほとんど判っていません もっとも判れば、有機物から生命を人工的に生み出せるはずです コアセルベート説とは 溶液中に分散するコロイド粒子 (分子より大きいが顕微鏡では見られない微細な粒子)が集合して 小さな滴となったものをコアセルベートというらしく コアセルベートは、分裂したり、融合したり、周囲の物質を取り込んだりと 生き物みたいな動きをすることから アミノ酸や糖を大量に含み、脂質膜を形成したコアセルベートが やがて代謝を行う生命体へと進化していったというものです 多細胞生物の誕生 最初の生命である硫化水素を餌とする 細菌(原核生物)の誕生が40~38億年前 原核生物のシアノバクテリア(藍藻)が海洋中に繁殖し 光合成によって酸素を放出し 大気中の酸素濃度が増加し出したのが35億年前 真核生物が誕生したのが14億年前 多細胞生物の誕生が10億年前 有性生殖を行う生物の誕生が9億年前といいます 生命誕生から多細胞生物の誕生まで じつに30億年かかっていますが 最初の多細胞生物は 池や川、田んぼなどの水のきれいな場所に 普通に見られるボルボックスという緑藻に 似たものだったと考えられています ボルボックス自体は クラミドモナスという緑藻(単細胞の鞭毛虫) と分岐したのが5千万年前頃だとされるので 比較的新しい生物のようですが 最も単純な多細胞体を作ることで知られています ボルボックスとは、ラテン語で「勢いよくころがるもの」を意味し 和名は、オオヒゲマワリといいます その体は、約2千個の小さな体細胞が 球状の構造をつくっています 体細胞は、2本の鞭毛を持ち この体細胞が、球体の回りを取り囲んでいます その球状体の内部に12~16個の生殖細胞が入っています つまり2種類の細胞種しか持たないシンプルな多細胞生物です 多細胞生物はどのように誕生したのか? 単細胞生物の中にも 互いにくっつき合って生きているものもいて 一つの細胞で全てをまかなうより 互いにまとまりあって機能を分化させる道を選んだ と考えられています 最初は体を支える細胞と 栄養の吸収・消化をする細胞の2つに分化し しだいに、筋肉や神経など 新しい組織と新しい機能が作られていったと考えられています そして、細胞機能を分化させた生物は単細胞では 生きていけなくなったといいます 人間は「脳があるからえらい」なんて思ってるけど 食べるのがことの始まりで 他はおまけみたいなものなのかもしれません(笑) 脳もお腹を満たすため、えさを得るために 作ったにすぎないのかもしれませんね(笑) ある動物の発生の過程(受精卵が胎児へと成長していく過程)は その動物の進化の過程を繰り返す形で行われる」 という「反復説」で有名な エルンスト・ヘッケル(1834~1919・ドイツの生物学者)は 原生動物のうち1本の鞭毛をもつ鞭毛虫の群体が 多細胞動物へと進化したと考え ボルボックスのような群体性の生物で 葉緑体を持たないものが、最初の多細胞動物と考えたといいます 〔ボルボックスは緑藻であり、動物とは系統を異にする〕 この鞭毛虫の群体から多細胞動物が生まれた というヘッケルの考えは 修正を加えられながらも今日までほぼ定説の位置を保ってきました しかしそのような生物は発見されていないことから 今日では、動物の多細胞化は 襟鞭毛虫〔えりべんもうちゅう・原生動物 淡水域、海水域共に広く分布 1本の鞭毛と、その基部を環状に取り囲む襟と呼ばれる構造を持つ 鞭毛が水流を起こしてバクテリアなどの餌を集め、これを襟が捕える〕 の群体から進化したという説が有力視されています なお、群体とは、無性生殖によって 増殖した多数の個体がくっついたままで 一つの個体のような状態になっているもののことです
海綿動物は、体表にある多数の小孔から水をとり 胃腔に存在する多くの襟細胞〔えりさいぼう・ 細胞体の上端に1本の鞭毛があり その基部に円筒状または漏斗状の襟がある 鞭毛により水流を起こし 入ってきた微生物などを襟が捕らえて食べる〕で 餌を消化吸収し、上部の出水孔から吐き出すといいます
【 海綿動物は、多細胞の動物の中で最も下等なものとされ ほとんどが海産 壺状、扇状、杯状など様々な形態をもつ種が存在する はっきりとした器官の分化は見られない 体は袋状で、上端に口、体壁に多くの小孔があり 内部に胃腔(いこう)をもつが 感覚細胞も神経細胞も分化していない 骨格はスポンジとして化粧用や沐浴用にされる 】 海綿動物の襟細胞が、襟に囲まれた鞭毛を持つことから 襟鞭毛虫との類似性が古くから指摘されてきたそうですが 海綿動物は人間へと進化を遂げる多細胞動物とは 系統が異なるものではないかという考えも見られたそうです 遺伝学の発展により、海綿動物に 人間へと進化する多細胞生物としての分化、発生に関わる 遺伝子群が存在していることが明らかになってきたといいます ヘッケルの「反復説」 ドイツの生物学者 エルンスト・ヘッケル 〔1834~1919・哲学者、医者、比較解剖学者 ドイツでダーウィンの進化論を広めるのに貢献〕によって唱えられた 「ある動物の発生の過程(受精卵が胎児へと成長していく過程)は その動物の進化の過程を繰り返す形で行われる」 というのが「反復説」です 彼の残した 「個体の発生(個人の発生)が、系統の発生(人類の発生)を繰り返す」 という言葉は、現在でも生物学の根本原則となっているといいます よく 「胎児は羊水という水の中に浮かんでいるが 羊水の成分はほとんど海水と同じである たった1個の受精卵は、この羊水という海の中で 複雑な構造をもった胎児へと成長してゆく」 「これは、生命が何十億年もの時間をかけて 単細胞から多細胞生物へと進み 海から陸へと上がって 両生類→爬虫類→哺乳類→人間 へと至った進化のプロセスと同じで ヒトの受精卵はこのプロセスを短期間で経験して 胎児へと育ってゆくのである」とか 「海水には血液と同じ成分が含まれていて 人間が海から進化したことを物語る」 などと言われるのは エルンスト・ヘッケルの「反復説」からきています ヒトの受精卵から成人になるまでの過程 受精卵→胚→胎児→乳児→成人は 単細胞生物→魚類→原始哺乳類→類人猿→ヒトによく似ている といいます 2ヵ月目の胎児は、まだタツノオトシゴのような姿で 長い尾、魚のエラのように見える部分= 鰓弓(さいきゅう・頸部に発達する)を持つ 心臓も魚類と同じ1心房1心室の心臓を持つ といいます やがてヒレのような手足が生える 3~4ヶ月で鰓弓がなくなり、尾も消え始める 4ヶ月ほどで手足の指が確認できる 肺は妊娠6ヶ月程度で形成される 受胎後7ヵ月の胎児は、毳毛(ぜいもう)で覆われている 胎児は十月十日で誕生するが、まだサル的特徴をそなえ 四つん這いから二足歩行できるようになるまでのプロセスは 類人猿→猿人→原人へのプロセスと合致するといいます 地球における生命の誕生・ 地球は生命体? 〔偶然説・ ガイヤ仮説と デイジーワールド〕 |
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