緋山酔恭の「B級哲学仙境録」 平行線も直角三角形も存在しない



B級哲学仙境論


平行線も直角三角形も

存在しない

 




平行線も直角三角形も
存在しない





2千年もの長きにわたって、ユークリッド幾何学は

世界で唯一の幾何学(図形について研究する学問)とされてきました


ユークリッド幾何学では


① ある一点から他の一点に直線を引くことができる

② 直線はどこまでも伸ばすことができる

③ 中心と半径で円を描くことができる

④ すべての直角は互いに等しい

⑤ 平面上に絶対に交わらない2本の線を引くことができる


といった5つの≪公理≫をもとに

「三角形の内角の和は180度である」などといった

500あまりの≪定理≫を導き出しているといいます




それに対し、18~19世紀最大の数学者の1人とされる

ガウス〔1777~1855・ドイツの人〕が

1830年頃に、5番目の「平行線は交わらない」という公理を

「平行線も交わる」という公理に置き換えても

矛盾が発生せずに、新しい幾何学体系(非ユークリッド幾何学)が

できてしまうことを発見しました



非ユークリッド幾何学とは

歪んだ紙の上に描いた図形を扱う幾何学で

これなら三角形の内角の和は180度にはならないし


また、相対性理論によると

空間は、重力によって歪んでいるのですから

非ユークリッド幾何学の公理の方が

むしろ現実に近いということになったのです





ただ、非ユークリッド幾何学以前に

平行線なんか絶対に引けないですよ


「直線」と言っても、肉眼では確認できなくても

必ずまがっちゃっていますからね(笑)





つまり完全体というのは

頭の中ではあり得るけど、現実にはあり得ない

これが我々の世界です



これに対し、宗教の世界というのは

これがあり得てしまうわけです

≪定義≫ ≪前提≫ によってあり得てしまうのです






そして、神の啓示(おつげ)という

完全な言葉・教えを≪定義≫してしまうと

「完全な教え」「完全な言葉」のもとに

あらゆることを定義しなければならなくなります


≪神による完全なる創造≫なんていうものもその一つで

結果「進化」が否定されたのです



そればかりでなく

人間のやることなすこと全てが神の言葉に縛られた結果

≪魔女狩り≫のような現象がおきたり


イスラム国家のような人間性をはなはだしく

無視した社会が出現したのです






イエスは、神の言葉である十戒

(ユダヤ教の実践の中心であるモーゼの十戒)

を守ることのできない罪人(つみびと)であれ

神を信じさえすれば救済されるという

≪完全なる愛≫ ≪神の愛≫を定義しました



ところがこの≪完全なる愛≫は

神の敵対者であるサタンには施されないようで(笑)



サタンと契約を結んだとされた

魔女にも適応されず

中世のヨーロッパでは「魔女狩り」が猛威をふるい

1つの産業とさえ言われるほどになったのです

(ふつうの庶民が密告により魔女にされ火刑にされた)



「汝(なんじ)の敵を愛しなさい」という

イエス自身が汝の敵を愛していないのですよ(笑)






前提として、完全な平行線があることを信じていれば

神との契約において

天国という≪幸福≫の世界に行けるのです



「だけど神だって

気分でやってくんないときがあるんじゃないのかな?」

「俺のときは気分でやってくれないんじゃないかな?」

なんて完全な平行線を疑うと信仰になりませんよね




そこで、宗教には≪完全≫の上に≪絶対≫という定義が

必要となってくるのです


これにより、宗教においては、世界が≪絶対≫で配置されます






これに対し、我々の世界においては

全てがいわば≪公約数的な決めごと≫として配置されています


ホントは平行ではないものを

人間の決めごととして≪平行線≫と呼んでいるのです


ホントは直角でない三角形を

人間の決めごととして≪直角三角形≫と呼んでいるのです




つまり、我々の世界においては、あらゆることは

≪人間の認識において≫、人間がとりあえず決めたこと

≪仮定≫でしかないということなのです


仮定のことを言葉によって区別したのです


これが人間の世界です




人間の世界とは、言葉の世界ですが

そもそも、人間の言葉による区別は完全ではありません

物差しで測るように、全てのものごとをキレイに分けられません




宗教の信者というのは

土台が≪人間の認識において≫というあやふやなものだと気づかず

自分たちの「都合」を、≪完全≫ ≪絶対≫と決めつけます


これがいざこざのもととなり、あらゆる対立を生んできたわけです




我々の世界が、全てが

≪人間の認識において≫を「前提」に成り立っているということは

≪完全な正解≫なんて出せないということです





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