緋山「B級哲学仙境録」 量子力学は「真」か「偽」か? ① 神はサイコロを振らない



B級哲学仙境論


量子力学とは?


 




量子力学は

「真」か「偽」か? ①




量子力学とは



量子力学は、こういう↓ものだそうです


海でたとえるなら、海水が「物質」で、波が「状態」である

原子より大きい世界では

こうして「物質」と「状態」をはっきりと区別できる



ところが、原子より小さい世界では区分ができず

粒子性(物質の性質)と、波動性(状態の性質)を併せ持つ


こうした特性をもつものを「量子」と呼び

その「量子」を研究するのが「量子力学」である





古典力学ではミクロの世界の現象を説明できない

ことから生まれたもので

原子またはそれ以下の大きさの粒子を扱う物理学です



原子や素粒子が、粒子としての特徴とともに

波としての特徴を合わせもつという「波動と粒子の多重性」や


光や電波などの電磁波も、波としての特徴とともに

粒子としての特徴を合わせもつという「光量子仮説」


粒子の位置と運動量、また時間(時刻)とエネルギーを同時に

知ることができないという「不確定性原理」が理論の中核のようです







不確定性原理



物体があると認識できるのは

太陽や蛍光灯などの光が物体にぶつかり

その反射を目でとらえているからだそうです


このように物体の位置を測定するというのは

光などを飛ばして、物体にぶつけ

その反射を観測することであり

これは人間だけなく、どのような測定器でも

原理は同じなんだそうです



目で見ているものは全て、光の反射です



なので今こうして見ている世界とは

厳密には一瞬過去の世界であるということです


例えば、≪私が、今 あなたを見ている≫ということは

実際にはあなたに反射した蛍光灯の光を見ている

ということになります






そこで、原子核の周りを回っている電子のような

とてつもなく小さいものを測定するとします


光には波長というものがあって

赤外線のように波長の長いものを電子にあてて


その反射を測定しようとしても

ちゃんとぶつからないので位置を正確に測定できません



例えば、携帯の電波を考えてみます


遠くまで届くのは、波長が長いからです


波長が長いと、物体(障害物)にぶつからず、伝播していきます


波長が長くても、それより大きな障害物があったら

それにぶつかって伝わりません


原理はこれと同じです




一方、紫外線のように

波長の短いものを電子にぶつけると


波長が短くなるほどエネルギーは高くなるため

電子がはじき飛ばされてしまいます


この場合は、電子がそこにあった

という位置については測定できますが


光をぶつけることによって、運動量が変化してしまうので

運動量を正確に測定できないということになります




これは、どんなに科学や技術が進んでも

克服できない原理的な問題だから

不確定性"原理"と呼ばれているそうです




ハイゼンベルクの「不確定性原理」は、譬えるなら

「液体の温度を測るとき、温度計を突っ込むでしょ

温度計を突っ込むことで、液体の温度が変化するので

液体の温度を正確に測ることなんて永遠に不可能だよね!!」

ということです





●  ハイゼンベルク(1901~76)

ドイツの理論物理学者

不確定性原理により31歳の若さで、ノーベル物理学賞を受賞


大戦中は、ナチの党員ではなかったが

原爆開発チームの一員だった


戦後は晩年までマックス・プランク研究所

(ドイツを代表する学術研究機関)の所長を務めた






物理学とは、物質の根源を求めていく学問であった

と言っても過言ではないでしょう


そこで、分子、原子、素粒子、クォークと進んでいきました


根源は基本中の基本なので、根源的な法則を知り

そのいくつかの法則を組み合わせれば

物質の性質や運動を全て説明できると考えていたわけです



ところが素粒子の段階までくると

「物質」(粒子)と「状態」(波)を区別できなかったり


また、位置と運動量を

同時に正確に測定できないということがわかり


それまでの物理で理想としていたことが崩壊してしまったのです








観測至上主義



結局、不確定性原理って

粒子の位置と運動量はちゃんと決まっているけど

正確に観測できないってことなんですよね?



それが不思議なことなんですが

素粒子の世界では

観測されていないときは

位置と運動量は、本当に不確定で決まっていない

と考えます



投げたボールを観測するときに

測定器の性能が悪くて

ボールの正確な位置や運動を知ることができないとしても

ボールの位置や運動は、当然、決まっています



しかし、ミクロの世界では、観測されていないときは

位置と運動量は、本当に不確定で決まっていない

というのです



そして、量子力学では

≪ ミクロの世界は、(人間あるいは観測装置などが)

観測することによって

物質の状態が決定される ≫と考えるのです




どうしてそんな観測至上主義に至ったのか?


それは、そうとしか思えないような現象が

実際におきているからだといいます


つまり、そのように考えぜらるを得ない

実験結果となる ということらしいのです







二重スリット実験



ハイゼンベルクの不確定性原理とともに

量子力学の基本的な原理となっているのが

量子力学の父と称される

デンマークの理論物理学者 ニールス・ボーアが

1927年に提唱した「相補性原理」です



●  ニールス・ボーア(1885~1962)

デンマークの理論物理学者。ノーベル物理学賞受賞

コペンハーゲンに理論物理学研究所を開き

海外から多くの物理学者を招いてコペンハーゲン学派を形成





相補性原理とは、物質の最小単位においては

物質(粒子性)と波動(波動性)の両方の性質をもっており

互いに補い合っていて

状況に応じてその性質があらわれてくるというものです




有名な実験に、電子の二重スリット実験というのがあります


この実験は古くから思考実験としてあったようですが

実際に行われたのはボーアの後の人たちによるそうです



1961年に複数の電子を用いた実験がなされ

1974年になって1個の電子を用いた実験が行われたといいます





電子を飛ばす電子銃の先に

平行にあけられた

2つのスリット(細長い穴)をもつボートを置き


その先には、カメラのフィルムのように感光し

電子があたると白い跡がつくスクリーンを置きます


そして電子銃より電子を飛ばします



このとき大量の電子を飛ばすと

スクリーンに白の縦縞模様があらわれます


この縞模様を干渉縞(かんしょうじま)

といいますが


この干渉縞は、波特有の現象なので

電子が波であるという証拠となります




電子銃から電子の波が飛んで、ボードに達すると

波はスリットAを通過する部分と

スリットBを通過する部分に分かれます



干渉縞のできる原理    転 写



そしてスクリーンには、2つの波が重なったものがあらわれます


2つの波の山と山、谷と谷が重なったところは

互いに強め合って明るくなり


山と谷が重なったところは

逆に弱め合って暗くなり、干渉縞ができます



      
縦縞の干渉縞  転写   同心円の干渉縞 転写 





次ぎに、2つのスリットに電子が通ったかどうか

を示すセンサーを設置し

電子銃から電子を1個だけ飛ばします


すると、スリットAかスリットBの

いずれかのセンサーが反応し

スクリーンには小さな点が1つあらわれます



スリットAのセンサーが反応すれば

スリットBのそれは反応しないし


スリットBのセンサーが反応すれば

スリットAのそれは反応しません



あたりまえのようですが

電子が波ならば、両方のスリットを通過するはずです


1つのスリットしか通過しないということは

電子が粒子であるという証拠になります





次ぎに、電子銃から

電子を1個ずつ繰り返し飛ばしつづけます


すると、スクリーンに点が増えいきますが

次第に干渉縞ができてくるそうです


これはとても不思議な現象なんだそうです



なぜなら


① 電子は同じ場所に飛んで行きそうなものであるが

スクリーン上のどこに到達するかが予測できない


② 干渉縞がができるということは

電子が飛んでいく確率の高い場所があるということになる



さらに、スリットの片方を塞いで

1つにすると干渉縞はできないといいます


つまり干渉縞をつくるには、スリットが2つ必要だといいます





電子を1個ずつ飛ばしつづけた場合

電子がどちらか一方のスリットのみを

通過したことをセンサーが示す


電子が波で、2つのスリットを通過するから

干渉縞があらわれるはずなのに

なぜ粒子である電子が干渉縞をつくるのでしょうか?





結論から言うと

「答えはわからない」


なぜ答えがわからないかというと

「観測できないから」です



電子が波なら干渉縞ができることは説明できる

しかし1つのスリットしか通過していないことの説明がつかない



逆に電子が粒子なら

センサーの反応についての説明はできる

しかし、干渉縞ができることが説明できない



この矛盾の答えとして

"観測される前は波であり、観測されると粒子になる"

というボーアらのコペンハーゲン解釈というのが

定説のようになっているというのです




それって観測装置=スクリーン に到達して

波であった電子が、はじめて粒子になるということ?



でもそれだと1個の電子を飛ばしたときも波なのだから

2つのスリットを通過していなくてはおかしいですよね


なんで1つのセンサーしか反応しないの??


という話になりますよね




それは、観測されると粒子になるからだそうです


つまり電子は


最初は波 → 波として2つのスリットを抜ける → ②
         ↓
       ① センサーに反応=観測されて粒子となった


② クリーンに1個の点=観測されて粒子となった


ということになります



強引というかメチャクチャな結論のような気がしますが

これが量子力学なのです







トンネル効果



≪ 粒子が自分のもつ運動エネルギーよりも

高いエネルギー障壁を、ある確率をもって突き抜ける現象 ≫

だそうです



図のように、坂に沿ってボールを転がすと


転 写


ボールの運動エネルギーが、位置エネルギーへと変換され

ボールは坂を登っていきますが


ある位置でボールは止まり

戻ってきます


ボールは、エネルギーの障壁を超えられない

ということになります



古典力学においては

物体が自分のもつ運動エネルギーよりも

高いエネルギー障壁を越えることはできないとされます




ところが、量子力学の世界では

一部の粒子が、エネルギーが、エネルギーの障壁を超えて

向こう側へと到達できるそうです


転 写



これがあたかも、粒子が、トンネルを通過したかのように

思えるので「トンネル効果」といいます



但し、全ての粒子がすり抜ける訳ではない

実際に物理的な壁をすり抜けている訳ではない

同じ粒子がすり抜けているのかわからない

ということらしいです



「シュレーディンガーの方程式」より

古典力学では越えられないはずの壁の反対側にも

粒子が存在できる確率が若干だけど残されているそうです




いずれにしても、これも粒子が

波の性質を持っていることでおこる現象だといいます



ボールを壁にぶつけ、壁の向こう側に届けることはできなきません

しかし壁の向こう側に声を届けることはできます

音は波として空気などの物質の中を伝わるからです


量子は、粒子と同時に波としての性質を持ちます

波であるから、壁をすり抜け向う側にも届く可能性を持つ

ということらしいです







神はサイコロを振らない



アインシュタインは

"神はサイコロ遊びなどしない"(サイコロを振らない)


〔決まってはいるが、人間には分からないだけという意味〕

と語り


それに対してボーアは

"アインシュタインよ

神が何をなさるかなど、注文をつけるべきではない"

と述べたことは有名です



アインシュタインは

電子がどちらかのスリっとを通過したのは決まっていて

同時に通過することなどあり得ないと考えたのです



ボーアの方は、この現象をより正確に観測しようとすると

その観測行為が現象に影響を与えてしまうため

正確に観測することは原理的に不可能であると主張したようです




つまり、電子がどのような動きをして

スクリーンに到達したかを観測しようとしても


観測するという行為は

電子に光などをぶつけてその位置を調べることなので

観測する対象である電子に影響を与えてしまう


それゆえ、正確に電子の軌道を調べることはできない

(不確定性原理)ということです






こうなると

≪物理って結局、矛盾なく説明がつく理論をつくりあげること≫

のように思えますよね



正確に観測することが原理的に不可能ということは

素粒子の世界においては、

真実を知ることができないということなのですから・・・







シュレーディンガーの猫



量子力学の不可解さを説明するのに

"シュレーディンガーの猫"という有名な譬えがあります


シュレーディンガー

(1887~1961・オーストリアの理論物理学者

ノーベル物理学賞受賞)は


量子力学の基本方程式である

シュレーディンガー方程式(波動方程式)をつくった人です



面白いのは、シュレーディンガーがのちに

量子力学というおかしな科学に関わってしまったことに後悔し


量子力学の批判として

「シュレーディンガーの猫」という思考実験を発表したということです




シュレーディンガーの猫とは


ある容器に、猫、放射線を発生させるラジウム

放射線をとらえる検出器、青酸ガス発生装置を入れておく


ラジウムが崩壊して放射線を出せば

検出器と連動する青酸ガス発生装置が作動し

毒ガスによって猫は死ぬ


放射線を出さなければ装置は作動せず猫は死なない


1時間で箱に入れたラジウムが崩壊し

放射線が放出される確率が50%



だとすると


箱を1時間放置したら

猫が生きている確率は50%、死んでいる確率も50%

とですよね


でも、実際には猫は死んでいるか生きているか

のどっちかでしかあり得ません



ところが量子力学というのは

人間(あるいは観察装置)が

観測するまでは、猫が生きている状態と

死んでいる状態が半々の割合で重なりあっていて


観測されることで、はじめて猫の生死が決定される


→ これはおかしいでしょ=量子力学は間違っている


と、シュレーディンガーは言っているのです







主観=客観的事実



量子力学以前の科学や哲学は

客観的世界こそ確定的であると考えてきました



例えば、あなたが「あれは間違えなく黒猫だったよ」

と主張したところで


みんなが「いや白い猫だった」と言えば

≪白い猫≫というのが、確定的な事実になります




これに対し、量子力学の考えでは

客観=確定、主観=不確定という見方を逆転させ


【主観が事実を確定する】という

新しい概念というか認識論を提唱ししているのです



但し、これは粒子の世界に限ることですが・・・




量子論的な考えからすると

観測する人によって

認識された「存在」の内容が

そのまま客観的事実として確定される

ということになります





しかし

複数の可能性のうち

ひとつを選択し確定するのは、観測する人間の心である

とか



人間だってミクロの物質でできている

ミクロの物質の可能性が重なり合っているなら

我々も、可能性=未来が重なって存在している

はずだとか



月もミクロの物質の集合体だから

誰も見ていない時は「ある場所にいる」とは言えない

とか


いった考えまで出てくると

どこまで正当な科学なのかよく分らりません







確率の世界



量子力学では

ミクロの物質は、観測しない限り

可能性が重なりあったもやもやとした状態で存在する

とされています



箱をあけて人間が猫を観測した瞬間

猫は、生と死が重なり合った状態から


どちらか一方の状態に変化します



「猫の生死は、箱を開ける前に決まっていたはずだ」

という常識は、量子力学では通用しないのです



そして、観測することで

ひとつの状態が確定されて観測される


どのような状態が確定されるかは

シュレーディンガー方程式により確率的に知ることができる


というのが量子力学の全てだとされています



全ては確率によって支配されている世界なのです





アインシュタインは

「観測に関わりなく

現象を確定的に説明できなければ、完全な理論といえない」

と批判し



ボーアは

「観測されていないときの現象を説明することは意味がない

現象は観測されて初めて確定して意味をもつ」

とやり返したとされます



アインシュタインは

≪決まってはいるが、人間には分からないだけ≫


つまり、結果が決まっていないなら

結果についていくつかの可能性がありますが


結果が決まっているなら

観測したしないに関わらず、結果は1つのはずです




ところが、量子力学においては、観測していなければ

結果が決まっているということは存在せず

観測してはじめて結果が決まるということになります



また、観測されていないときは

結果が決まっていないのだから

結果になる可能性が重なりあって存在している

と考えるのです





もう1度 確認しておきましょう


ミクロの世界では


観測される前の物質は

観測されるであろういくつかの可能性が

重なり合った状態で存在している


観測して初めて

可能性のうちのひとつが確定し観測される


観測される前の物質は

確率によって示される形で存在する  ということです







重ね合わせと量子のもつれ



シュレーティンガーの猫とは

量子のもつ「重ね合わせ」という性質を

分かりやすく譬えたものです



「重ね合わせ」とは

「二重性」(粒子であり、波である)とともに

量子力学の基礎的概念になります




例えば、電子のスピンには、右向きと左向きがあって

1つの電子がどちらの状態もとることができます


これもやはり観測によって決定されます



つまり、電子は観測される前は

どちらの状態ももっている

「重ね合わせ」の状態にある ということになるわけです






1つの粒子が、粒子Aと、粒子Bに分裂したとします


このうち粒子Aが、右向きと観測されたなら

その瞬間に、観測しなくても、粒子Bは左向きである

という不可思議な現象が≪量子のもつれ≫です




一方の状態が、もう一方の状態を決定する

ということなのですが



なぜ、不可思議かというと


粒子Aと、粒子Bそれぞれが

「重ね合わせ」の状態にあり

上向き・下向きになる確率は、半々であるのなら


粒子Aと粒子Bが

同じ向き(ともに右向き・ともに左向き)になる

状況もあってよいはずだからです




そして、この≪量子のもつれ≫は

粒子Aと、粒子Bとの距離が、どれだけ離れようとも

たとえ、宇宙の端と端でも

おきるとされています



アインシュタインは≪量子のもつれ≫について

「気味の悪い遠隔作用」と述べています



粒子Aと、粒子Bとの距離が、どれだけ離れようとも

Aの状態の情報が、Bへと瞬時に伝わる



これは「どのような存在も光の速度を超えられない」

という相対性理論の基本なる≪光速度不変≫と矛盾します





アインシュタイン、ポドルスキ―(アメリカの物理学者)

ローゼン(イスラエルの物理学者)は、この現象に対し


「スピンの向きは、2つの粒子ができたときに決まっている

しかし、我々には分からないから確率で示すしかない」

と考えました



譬えるなら、1対の手袋を箱に入れて

宇宙の端と端に遠ざけているだけだと考えたわけです



相対性理論と両立しないのではないのか?

というこのパラドックは

3人の頭文字をとって「EPRパラドックス」と呼ばれましたが



現在では、≪量子のもつれ≫は

正しいと考えられるようになっているといいます



また、因果関係を伝えないので

相対論と矛盾していない として


今では「EPRパラドックス」は「EPR相関」と呼ばれているそうです





また、≪量子のもつれ≫という現象をもとに

ある粒子の状態を、別の粒子にコピーすること

が考えだされ、これを「量子テレポーテーション」といいます



但し、テレポーテーションといっても

物質そのものが瞬間移動するというものではありません



原理的には


1つの粒子からつくられたAとBの粒子のうち

Bを、遠くに引き離します


Aと、別の粒子Cを、ペアリングさせます


AとCとの間の≪量子のもつれ≫による

Aの変化した状態(AA)の情報が、Bへと伝えられます


AとBとの間の≪量子のもつれ≫によって

Bは、Cと全く同じ情報を持つ粒子へと変化し

結果的に遠隔地に、粒子Cのコピーが出現する


といったものです







電子の軌道



とはいえ、量子論は、粒子の運動を説明するのに

すばらしい成果を上げてきたといいます



ニュートンが構築した古典力学では

ある状態は、時間の経過とともにいろいろな状態へと

変化していきますが


時刻を固定すれば

いつも1つの状態しか観測されません



これに対して

分子や原子や素粒子の世界を対象とする

量子力学では時間を固定しても

いろいろな状態として観測されると考えます



例えば、Aの状態にある電子を

t秒後に観測すると

Bの状態をある確率でとったり

Cの状態を別の確率でとったりすると説明されます



また、どの状態に観測されるかは

実験のたびに変わり得ると考えるのです






学校では、電子は、原子核の周りの円軌道を

地球が太陽の周りを回っている

とだけ習いますが


本当はそんな単純なものではないらしく

電子は、忍者のように

別の軌道へと飛び回っているようです



電子軌道とは

≪そこに電子が存在する確率が高いという場所≫

だといいます




電子の軌道は1つではなく


内側から

K殻・L殻・M殻・N殻・O殻・P殻…

といった「電子殻」が存在します



なお、A殻ではなく、K殻から始まるのは

のちにK殻よりも内側に

電子殻が発見されることを予想したことからだといいます


結局、Kより内側には電子殻は見つからなかったのです




電子殻に入ることが可能な電子の数は

K殻は1n、L殻は2n、M殻は3n…と数えられ

2×(nの2乗)なので、K殻では2個、P殻では72個だそうです




そらに、研究が進み

電子殻の中に、さらに「軌道」があることが分りました


この軌道は「電子雲」(でんしうん)と呼ばれます


電子たちは、原子核を取り巻く「雲」をつくるようにして

回っているそうです



この「電子雲」が

≪電子が存在する確率が高いという場所≫

ということになります




この「電子雲」には、図のように特定の形があるようです

fg軌道というのもあるようです


 転 写



 転 写



 
 電子雲  転写




例えば、酸素原子の原子核には

8個の陽子が含まれています


陽子と電子の数は同じなので

電子殻には8個の電子が入ります


このうち2個はK殻のs軌道に収まっています


K殻はs軌道しかないので

残りの6個の電子は外側のL殻に入ります


L殻のs軌道に2個が収まっています


L殻のp軌道は
px、py、pzに分かれていて

電子が1個ずつ入り


残りの1個は

L殻のpx軌道に収まるといった具合です




p軌道は原子核と交差しているのに

なぜ原子核と電子が衝突しないのかというと


 電子雲  転写



電子は粒子の性質の他に「波」という性質を持っている

からだそうです



電子を観測しようとすると

実際には1個しかなくても

無数に見えるのは波の性質をもつためだとされます




また、電子がエネルギーを得ると

外側の軌道へと移動しますが



電子の軌道と軌道の幅は、原子によって決まっている

= 電子のとれるエネルギーの状態が決まっている

= とびとびの値しかとれない といいます







粒子の種類 1



物質をつくっている「フェルミ粒子」と

粒子間の力を生み出す「ゲージ粒子」の

2つのグループに分けられています



なお「ゲージ粒子」に、素粒子に質量を与える

ヒッグス粒子を加えて「ボーズ(ボゾン)粒子」といいます



ゲージは、ものさし、尺度の意味

フェルミとボーズは、物理学者の名前に由来します





① フェミニ粒子


フェルミ粒子には


6種類のクォーク

レプトン〔電子・ミュー粒子・タウ粒子、3種のニュートリノ〕


さらに、陽子、中性子 があります



陽子は、アップクォーク2個とダウンクォーク1個

中性子は、アップクォーク1個とダウンクォーク2個

からなります




クォークという名前は、クォークモデルの提唱者

マレー・ゲルマン(1929~2019・アメリカの物理学者)による命名で


彼は最初、クォークは3種類と考え、ある小説の中で

海鳥が「クォーク、クォーク、クォーク」と3

回鳴くところから付けたとされます




クォークには、世代という概念があります

質量の違いによって

第1世代、第2世代、第3世代に分けられています



1つの世代に2種類存在するので

2種類×3世代で6種類のクォークがあるということになります


なお、レプトンにも同じように3つの世代があります



6種類は、アップクォーク、ダウンクォーク、ストレンジクォーク

チャームクォーク、ボトムクォーク、トップクォークです



それらと、逆の電荷を持つ反粒子

〔質量や寿命は同じだが、電荷などの性質が逆の粒子〕

を加えると12種類となります





クォークは、原子核を作るように

非常に強く結びつく素粒子です


逆にレプトンは結びつきが弱く、単体で存在します


私たち自身、石や水や花、宇宙に至るまで

これらフェルミ粒子からできているといいます






② ゲージ粒子


ゲージ粒子には

光子(フェトン)、ウィークボゾン

グルーオン、中間子(メソン)

グラビトン(重力子・未発見) があります



光子は、電磁気力を伝える粒子です


原子核の陽子と、電子の間に働く電磁気力は

互いに光子をやり取りすることにより生じるといいます



このように粒子間に働く「力」とは

粒子の間で粒子を交換することにより生まれる

相互作用であることが分かっています


このため「力」は「相互作用」といいます





「力」には、揚力、浮力、圧力

表面張力、遠心力などさまざまなものがありますが

基本的な「力」は4つしかないとされています


全ての物質は、素粒子からできているので

全ての「力」は、究極的には、素粒子間に働く「力」に還元されます


その「力」は4つしかないという意味です



4つというのは

「重力」・「電磁気力」・「弱い力」・「強い力(核力)」です


4つの力とは「4つの基本相互作用」と呼ばれています


それぞれ、重力相互作用・電磁相互作用・

弱い相互作用・強い相互作用と呼ばれています




中間子は、電子より重く

陽子より軽いことから名付けられた名称で

1つのクォークと、1つの反クォークから出来ています




また、フェルミ粒子、ゲージ粒子の

それぞれの素粒子に、電気の符号が反対の性質を持つ

反粒子と呼ばれるパートナーが存在するといいます








粒子の種類 2



強い力に関わる粒子を

ハドロン(ギリシャ語の「強い」の意味の言葉に由来)といい


その中のバリオン(ギリシャ語の「重い」の意味の言葉に由来)は

3つのクォークから出来ています


陽子と中性子はバリオンの1種です



中間子(メソン)もハドロン粒子で、たくさんの種類があります




バリオンやメソンは、元素と化合物の関係でいうと

化合物にあたるので何百種類もありますが

バリオンとメソン以外のバドロンは未発見です



2つのクォークと2つの反クォークから成るテトラクォーク

4つのクォークと1つの反クォークから成るペンタクォーク

6つのクォークから成るダイバリオンなどが予測されていて


これらは、エキゾチックハドロン

またはエキゾチックバリオンと総称されます



なお、バリオン粒子で作られていない物質や

マイナスの質量を持つといった仮想物質は

エキゾチック物質と呼ばれます





電子やニュートリノは、クォークから出来ていません

これらは、クォークから出来ている

重い素粒子のハドロン族に対し

軽い素粒子でレプトン族といいます


レプトンとは、ギリシア語で「軽い」の意味で

強い力には関与しない粒子です







4つの力



4つというのは

「重力」・「電磁気力」・「弱い力」・「強い力(核力)」です




このうち「重力」は、素粒子同士が互いに引き合う力です


物質をまとめて天体を作り、天体をまとめて銀河を作る

地球が太陽の周りを回っているのも重力があるからです





「電磁気力」とは、電気の力と磁気の力です


プラスの電荷とマイナス電荷には引力

プラスとプラス・マイナスとマイナスには斥力(せきりょく)


またN極とS極には引力、NとN・SとSには斥力

という電磁気力が働きます



原子は、原子核とその周りを回っている電子でできていますが

原子核(プラスの電荷)と電子(マイナスの電荷)を

結びつけているのがこの力です



原子同士、分子同士をくっつけているのもこの力です




電気と磁気は、かつては別の現象として認識されていましたが

今では、電流と磁界は切っても切れない関係にあり

電流が流れると必ずまわりに磁界が生じ

磁界が変化すると電流が流れることが分かっています


このため電気の力と磁気の力は

本質的に一緒の力とみなし電磁気力といいます





「 弱い力」は、原子核内のプラスの電荷をもつ

陽子同士をつなぎとめている力です


プラス同士は反発しあうので、本来なら

原子核から飛び出していくところをつなぎとめている力です

多くの放射線はこの力によって生じているそうです





「強い力」とは、陽子と中性子の中ではクォークをまとめ

原子核の中では陽子と中性子をまとめている力です







●  弱い力



原子核はプラスの電荷をもつ陽子と

電荷をもたない中性子でできています


プラスの電荷とプラス電荷は反発しあうので

つまり電磁気力によって

陽子同士が反発しあって原子核より飛び出しそうなものです


ところが原子核にちゃんとおさまっています



中性子は15分ほどで崩壊し

電子と反ニュートリノを放出して陽子となる

これを、β 崩壊というそうです



なので、かつては

≪中性子が崩壊して、陽子と電子と反ニュートリノになるなら

陽子に、電子と反ニュートリノを与えれば中性子になるだろう


原子核の中では、中性子と陽子が、電子と反ニュートリノを交換し合い

互いに入れ替わることが繰りかえされている


電子と反ニュートリノを交換し合うときに働く力が

陽子同士をつなぎとめている≫


と結論されていたようです



ところがこの力を計算したところ

陽子同士が反発する力よりはるかに小さいことが分かったそうです


つまりこの力では陽子同士を結びつけることはできない

これは電子が陽子よりずっと軽いからだといいます



そこで陽子同士を結びつけている

「強い力」の存在が想定されたわけです





現在では、「弱い力」とは

β 崩壊を、引き起こす力としてクォークレベルで説明されます



クォークレベルでみると


中性子〔udd・1つのアップクォークと

2つのダウンクォークでできている〕の

d(ダウンクォーク)から


W-ボゾン(マイナスのウィークボソン)という粒子が放出され

u(アップクォーク)へと変化し

その結果として、中性子が陽子(uud)となる



また、放出されたW-ボソンは

崩壊によって反電子ニュートリノと電子となる

これが、β マイナス崩壊



陽子〔uud・2つのアップクォークと

1つのダウンクォークからできている〕の

u(アップクォーク)から


W+ボゾン(プラスのウィークボソン)という粒子が放出され

d(ダウンクォーク)へと変化し

結果とし、陽子が中性子(udd)となる



また、放出されたW+ボソンは

崩壊によって電子ニュートリノと陽電子となる

これが、β プラス崩壊(陽電子崩壊)



こうして、中性子と陽子が、ボゾン粒子を放出することにより

中性子⇔陽子と入れ替わる反応に関与するのが「弱い力」

とされています



なお、この「弱い力」を受けると粒子の種類(香り)が変わるため

弱い力に対する研究は、量子香力学とも呼ばれています






【 力を伝える素粒子・・・・


「光子」… フォトン。電磁力を伝える


「重力子」… グラビトン。重力を伝える。未発見


「ウィークボソン」… 弱い力を伝える


「グルーオン」… 強い力を伝える 】








●  強い力



「強い力」「核力」とは


陽子と中性子が、中間子をやりとりし合うことによって

原子核を安定な状態にしている力

つまり陽子と中性子をπ-中間子が媒介して結びつけている作用


これは、湯川秀樹(1907~81年・ノーベル賞受賞)が予言したものです



それと、陽子・中性子の中のクォークが

グルーオンという質量0の粒子をやりとりし合うことで

陽子・中性子を安定な状態にしている力をも合わせて言います


電磁気力の100倍程の大きさをもつとされます





グルーオンは「強い力」を伝える素粒子です


「強い力」とは、陽子と中性子の中でクォークをまとめ

原子核の中では陽子と中性子をまとめている力です


グルーオンとは、糊の粒子の意味

質量は0 電荷も持ちません



質量がない物質は、光子、グルーオンの2つで

ニュートリノは、あるかもしれないとされています


重力子(グラビトン・重力の粒子、未発見)については

質量・電荷ともに0とされるが不明です




原子核を構成する陽子と中性子は3つのクォークからなります

クォークは赤、緑、青の3色を持つ

クォークが、グルーオンを媒介として

色荷をやりとりすることで生じる力が強い力です



クォークが、グルーオンを媒介として

白(赤+緑+青=白)になることにより

陽子や中性子は安定な状態を保っているとされています



但し、色荷(カラー)を持つといっても

我々が日常目にしている色とは違います


クォーク間のグルーオンのやりとりを色で説明したものにすぎません



強い力に対する研究は

量子色力学と(りょうしいろ力学)と呼ばれているそうです




クォークは、強い力の作用により

全体として白となる組み合わせでしか存在できない

このため、クォークとグルーオンを単独で取り出すことはできない

これを「クォークの閉じ込め」といいます





クォーク同士は強く引き合い

集まって陽子や中性子などをつくりますが

宇宙誕生直後は熱運動によりバラバラだったとされます


クォークをグルーオンとともにばらした状態のものを

クォーク・グルーオン・プラズマというそうです



2000年、スイスのジュネーブにある欧州合同原子核研究所の

スーパー陽子シンクロトロンという大型加速器で

鉛と鉛、鉛と金の原子核同士を、光速に近い速度で衝突させ


1兆度という超高温をもつ

クォーク・グルーオン・プラズマを作り出したといいます

〔この状態は、ビッグバンから10万分の1秒後の状態だという〕






我々は、「なんだ、基本的な力はたった4つしかないのか」

と思いますが

物理学者からすると「4つもあるのか」となっちゃうそうです


そしてこの4つの力を1つの理論で統一することが

≪物理学最大の理想≫となっています


4つの力を1つに統一するということは

1つの理論で全ての物理的現象が説明できるからです




4つのうち2つは既に統一理論が完成しています(電弱統一理論)

そして3つの統一もだいたいメドが立ってきています(大統一理論)

しかし「重力」だけはどうしても統一できません







電弱統一理論



「電弱統一理論」は「ワインバーグ・サラム理論」ともいいます



ワインバーグ(1933~・アメリカの物理学者)と

サラム(1926~96・パキスタンの物理学者)により提唱され


また、グラショウ(1932~・アメリカの物理学者)も

電磁気力と弱い核力について似たような

統一理論を唱えていたといいます


3人はこの研究によりノーベル物理学賞を受賞しています




エネルギーが100ギガ電子ボルト

〔電子ボルトはエネルギーの単位で

1ボルトで加速された電子1つのエネルギーが1電子ボルト

ギガは10億倍〕をはるかに超えると


弱い力を伝える3つのウィークボゾン

(正の電荷を持つWボソン、負の電荷を持つWボソン

電荷も持たず中性のZボゾン)と


電磁気力を伝える光子が、似たふるまいをするというものです



以上の4つの粒子は

低エネルギーのときは、異なった粒子に見えていても


じつはすべて同じ粒子で

高エネルギーでは同じようにふるまうというものです




ルーレットが速く回転しているときは

どの玉のふるまいも似ていて

ぐるぐる回るだけなのに対して


ルーレットの回転が遅くなると、玉のエネルギーは減少し

最後には37個の溝のどれかに落ちる


低エネルギーでは、玉がとりうる状態が37通りになる

といった譬えがなされます




低エネルギーでは「自発的対称性の破れ」により

異なった粒子のようなふるまいをするそうです



この理論をサラムとワインバーグが提唱したとき

加速器が、ウィークボゾンを作り出すには出力が足りず

信じる人は少なかったそうですが


のちに、この理論の予測が、実験にとてもよく合致していたので

3人にノーベル物理学賞が与えられ

さらにその後、ウィークボゾンが発見されたといいます







大統一理論



重力を除く3の力の統一する理論で

さらに重力を統一するのが、超大統一理論(万物の理論)で


「大統一理論」は「標準理論」の延長上にあります



「標準理論」とは、1970年代以降

素粒子物理学で広まった理論の枠組みで

標準模型、標準モデルともいいます



クォークとグルーオンにより強い力を説明する

量子色力学(りょうしいろりきがく)と


電弱統一理論と


クォークが6種類以上あると考える小林・益川理論


この3つを合わせたものが「標準理論」だそうです




物質を形づくる基本粒子として

クォークとレプトン〔各3世代6種類〕


力を媒介する基本粒子として光子

ウィークボソン、グルーオン


これに粒子に質量を与えるヒッグス粒子を想定し

重力を除く3の力を記述する理論であるといいます




この標準理論から

重力を除く3の力の統一を試みたのが「大統一理論」ということです




標準理論では、あらゆる物質は、クォークを含んでいる

ということになりますが

未だに、クォークを、単独で見つけることに成功した人はいません



クオークは、つねに2つ以上がくっついて自然界に存在しています

これが「クォークの閉じ込め現象」です


この現象を説明することが

物理学の重要課題の一つになっているといいます





≪ 通常のエネルギー状態では

強い核力は強力で

グルーオンがクォーク同士を固く結びつけていて


「クォークの閉じ込め」により

クォークとグルーオンを単独で取り出すことはできない



だが、巨大加速器の高エネルギーのもとでは

強い核力はずっと弱くなり


クォークとグルーオンが

ほとんど自由粒子のようにふるまう



なので、強い核力は、高エネルギーでは弱くなり

電磁気力と弱い核力は、高エネルギーで強くなる



そして、ある非常に高いエネルギー

(大統一エネルギーと呼ばれる)状態では


3つの力はすべて同じ強さになり

1つの力の異なった側面に過ぎなくなる ≫


というのが、大統一理論です





さらにこの理論では、力の粒子ばかりでなく

クォーク・レプトンといった物質粒子も

大統一エネルギーでは、本質的に同じになるとしています



強い力を感じるクォークと

感じないレプトンを統一的に考えるものです




ただ大統一エネルギーの値は

1000兆ギガ電子ボルトには達すると考えられていて


大統一エネルギーまで加速できるような加速器は

太陽系と同じぐらいの大きさになるらしく

実験証明は難しいとされています




電弱統一理論も、大統一理論も

結局、超高温の高エネルギー状態では同じふるまいをする

という話なのですが


これは、もともと(ビッグバン直後)は1つであった

という考えからきています







陽子崩壊



スーパーカミオカンデは

宇宙線の影響をうけない地下1000mのプールに水を溜め

水の中の陽子が崩壊するときに放出されるガンマ線を検出し

「陽子崩壊」を証明するために建設されたといいます


〔 スーパーカミオカンデは、東京大学宇宙線研究所によって

岐阜県飛騨市の神岡鉱山の地下1000mに建設された

国内最大(世界でも有数)の実験装置 〕




陽子の寿命が10の33乗年なら

10の33乗個の陽子を集めれば

1年に1個の陽子の崩壊が観測できることになる

という論理です



陽子崩壊とは

陽子の中にある2個のクォーク(アップとダウン)が

「大統一理論」で、存在が仮定されている

X粒子を交換して、陽電子と反クォークになり


陽子が、陽電子とパイ中間子(陽子の残りの1個のクォークと

先の変換によってできる反クォークが結びついてできる)

に崩壊する現象です



さらに、パイ中間子は2個のガンマ線(光子)なるとされています


また、陽電子だけでなくニュートリノも作られるとする説もあるようです





「標準理論」では、クォークの数や

レプトンの数が変化することはないとされているので


陽子は、それよりも軽い電子やニュートリノに崩壊することなく

安定して存在できていると考えます



これに対し、大統一理論はクォークとレプトンを区別せず


クォークがレプトンに変わる相互作用があるとし

そのため、陽子が崩壊するという現象を予言しています




弱い力の源である「β崩壊」は、質量数を変えることなく

陽子・中性子の変換が行なわれる現象であるのに対し


「陽子崩壊」は、陽子が崩壊して他のより軽い粒子になる現象です



もし陽子崩壊を発見できれば、大統一理論が正しいという証拠となり

陽子が物質をつくっているわけですから



同時に、「物質には寿命があり

将来的に宇宙の全ての物質は原子レベルで崩壊する」


「宇宙は不滅ではない この世界には寿命がある」



「最終的には陽子崩壊で作られた光子や素粒子のみとなる」

〔陽電子と光子の寿命は無限とされている。ニュートリノの寿命は不明〕


といったことが証明されるなんて言われています




光子や素粒子だけになったからといったって

空間が残るのだから


「宇宙に寿命がある」というのはいいすぎじゃないの?

という話になりますが


空間すら残らない可能性を唱える仮説もあるようです






陽子崩壊は、3つの力(電磁気力、弱い力、強い力)を統一する

「大統一理論」の中でも、とりわけ有力な候補と考えられていた

「SU(5)理論」で予言されていました



加速器で大統一エネルギーを実現させるのは不可能なので

代わりに「陽子崩壊」をもし発見できれば

「大統一理論」は正しいという証拠になるらしいのです



そこで装置の中に数千トンの水を溜めて

長時間にわたって観測を続けてきたそうなのですが

未だに発見できていません




また「SU(5)理論」の理論が予測した

陽子の寿命は10の30乗~32乗でしたが


現在では陽子の寿命は10の34乗以上あることが

分かっているので



「SU(5)理論」は否定されたが

「大統一理論」という考えが否定されたわけではない

なんて話になっています




たいていの「大統一理論」は

「陽子崩壊」を予測していますし


また「SU(5)理論」に超対称性という要素を加えた

「超対称大統一理論」では

陽子の寿命はさらに延びるので

現在でも、観測が続けられているようです




量子力学は「真」か「偽」か? ②




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