緋山酔恭「B級哲学仙境録」 生物史 Ⅱ



B級哲学仙境論


生 物 史


 




生物史 Ⅱ




生物史 ⑤



デボン紀(約4億1000万年前~約3億6000万年前)には

ひれを四肢へと進化させる魚が登場します


水辺に植物が進出したことにより

水辺は、水中に沈んだ木が折り重なり、ジャングルのようになった


敵から逃れるために浅瀬の水草に追いやられた生物が

そういった環境に適応するため

ひれを四肢へと進化させた魚が誕生したといいます



さらに空気中の酸素を利用するために肺を発達させていったとされます




こうして、魚類の一部から新たに両生類が出現します

これが動物の陸上進出です



陸上へ進出するには

乾燥に強い皮膚と重力に耐える身体が必要ですが


両生類まだ乾燥に強くなかったので

水辺を離れることは出来なかったのです



今でも両生類は半水半陸で、卵は殻を持たず水中に産みますし

幼体はえら呼吸し、肺呼吸は成体からです



脊椎動物が完全な陸上進出を果したと言えるのは爬虫類になります



なお、四肢は、ひれが倒木の中を進むために

有利な四肢に変化したもので


それが陸上を這うことにも用いられるようになった

=「外適応」で、肺も最初から陸上生活を目的として

進化させたものではないということです





●  前適応と外適応


外適応とは

前適応〔生活様式の変化がおきることで

のちに重要になる器官や性質が

それ以前にあらかじめ獲得されること〕とほぼ同じ意味だが


もともとの目的とは別の目的に利用される前適応に対し


〔鳥の羽は、もともとは飛ぶためではなく保温が目的

だからティラノサウルスにも備わっていた〕


外適応は、もともとの目的に加えて別の目的にも利用される流れをいう





それから、デボン紀の中期あるいは後期には

クラドセラケ〔サメの祖先。最古の軟骨魚類(サメやエイ)。全長約1.8m

口は体の下ではなく先端にあり、アゴも頑丈ではなかった〕

が登場したとされます


クラドセラケは、今のホホジロザメに近い形の尾びれを持ち

それにより捕食者である巨大な甲冑魚などから逃げていたようです



クラドセラケ  転写






なお、新生代第三紀の中新世(2600万年~600万年前)の

海が比較的暖かった時代には


メガロドン(和名は、ムカシオオホホジロザメ)

というホホジロザメと近縁な巨大なサメが存在したそうです


サメは軟骨魚類なので歯しか化石として残りませんが

そこから推定すると体長は13~15メートル

(ホホジロザメは5メートル)あったそうです





当時の最強の生物は?


デボン紀後期には、ダンクレオステウスという

体長が5~9mあったと推定されている

板皮魚類(ばんぴぎょるい)が王者として君臨していたといいます




ダンクルオステウスの頭骨標本 転写




ダンクルオステウス 転写



ダンクレオステウスの咬噛力は5300kgあったといいます


〔 ライオンは427kg・ワニは1300kg・ティラノサウルスは1360kg

但し、噛む力の測定値というのはデタラメで

カバが1tで、サメが600kgという人もいれば

ホオジロサメのそれは3tあるという人もいる

ティラノサウルスは3~8tともいう 〕



板皮魚類とは

頭部から肩部にかけて複数の骨板によって

覆われていたことからの名称です


甲冑魚です



アゴに骨を備えた最初の脊椎動物で

真の歯は持たず、歯状の突起に変形した

顎骨によって獲物を捕食していたといいます





石炭紀(約3億6000万~約2億9500万年前)には

シダ植物が繁栄し大森林を作り


両生類から地上生活に適応した爬虫類(「爬」とは地を這う意)と

哺乳類型爬虫類(哺乳類につながる)の共通の祖先が出現し

巨大昆虫類が繁栄します



トンボの先祖であるメガネウラは70cmもあったそうです


多足類(ムカデやヤスデの仲間)の

アースロプレウラは、史上最大の陸棲の節足動物で

2~3mもあったといいます



アースロプレウラ  ウィキペディアより



当時は巨大なシダも生い茂っていたそうです




昆虫と、エビやカニとの共通の祖先は

酸素を含んだ水を

気門から取り入れることで呼吸をしていたそうです


〔 現在のエビやカニはエラ呼吸をする

カニは、陸に上がっている時は、体の中に水分を蓄わえる場所があって

その水分中に溶けている酸素をエラから取り入れている 〕



昆虫は、陸上に出て

空気をそのまま取り込めるように進化したわけですが


呼吸の仕組みは、海にいた時のものを

ほぼそのまま用いることができたといいます


〔 昆虫にはたいてい頭部に2対、腹部に8対ほどの気門がある


この気門が直接気管とつながり、体中に酸素を運ぶ

細かな気管は体中張り巡らされている

体を動かすことによって体全体の気管に酸素がおくられる 〕




しかし、これが体に酸素が供給できる大きさまでにしか

巨大化できないことになったそうです


石炭紀にアースロプレウラやメガネウラのような

巨大節足動物が多かった原因として

大気中の酸素濃度が約35%(現在は21%)

と高かったためとする説があります



また脊椎動物が陸上での進化を始めて間もない頃で

これらを捕食する動物が少なかったから大きくなれた

といった考えがあれます


乾燥化が進み、酸素濃度の低下が始まり

ベルム紀はじめには巨大節足動物は絶滅したとされます





古生代最後のペルム紀

(二畳紀。約2億9500万~約2億4500万年前)には

両生類・爬虫類が繁栄し


巨大大陸パンゲア〔ペルム紀から中生代の三畳紀にかけて

存在したと考えられている超大陸〕が形成され



ペルム紀末(古生代と中生代の境界)には

史上最大の大量絶滅が起こっています



また、古生代(5億7000万年前から2億4500万前まで)末期には

裸子植物(イチョウ・ソテツ・針葉樹など)が誕生したとされます


被子植物の誕生は1億3000万年前頃だといいます



被子植物は、それまで風任せだった授粉を

花と蜜によっておびき寄せた昆虫にさせたり


果実を作り、動物に種子を運ばせたりと

捕食者だった昆虫や動物を繁殖のパートナーとして利用しました



これにより、効率よく生息域を広げ

裸子植物に代わり、植物界の主役となっていったとされます




また、花粉や蜜、果実といった新しい環境要因により

昆虫の新たな種が多数誕生します


被子植物は、さらに受粉に昆虫を利用する方向に進化し

それにともない昆虫もさらなる進化を遂げていったそうです


共進化ですね







生物史 ⑥



恐竜は中生代の三畳紀(約2億5000万年前~約2億年前)に出現し

白亜紀(約1億4600万年前~約6500万年前)末に絶滅します


白亜紀には羽毛を持った恐竜が登場します

これが鳥類の祖先とされます


もともと羽毛は、飛ぶためではなく

保温のために備わったと考えられていています



1990年代以降、中国の白亜紀の地層で、羽毛をもった恐竜の化石=

羽毛のない恐竜と現在の鳥類との間を埋める化石が相次いで発見され

「鳥類の先祖は恐竜であった」というのが定説になったそうです



なぜ飛べるようになったかについては

木の上から飛びおりて滑空するうちに飛翔力を発達させた

という説が有力です





プテラノドンには羽毛はないようだけど?


中生代に生息していたプテラノドンを代表とする翼竜は

初めて空を飛んだ脊椎動物(爬虫類)ではありますが

これは恐竜ではないといいます


恐竜というのは

あくまでも四足歩行や二足歩行の陸生の爬虫類をいうそうです



翼竜と恐竜は共通の祖先から分かれまはたが

翼竜と鳥では類縁関係は遠いといいます


翼竜の姿が恐竜よりも鳥に近いのは

「収斂」(しゅうれん)によるといいます


もぐらの手と、オケラの手

鳥の羽と、コウモリや昆虫の翅と同じというわけです




プテラノドンで7~9mあったそうです


やはり翼竜も恐竜と同様に白亜紀末の大量絶滅の際に絶滅したとされます



プテラノドン  ウィキペディアより





なお、プレシオサウルス(体長は2~5m)などの海棲爬虫類も

恐竜ではなく「首長竜」として分類されます

ネス湖(イギリス)のネッシーみたいなやつです



首長竜  転写




ブラキオサウルス(体長25m・体高16m)など

首の長い巨大草食恐竜も首長竜と呼ばれますが

これは間違えだそうで、恐竜です




始祖鳥が鳥の祖先なのかな?


始祖鳥は、三畳紀と白亜紀の間のジュラ紀に生息していたらしいです


ただこの始祖鳥(体長は長い尾も含めて大きなものでも50cm程度)は

現在では鳥類の直接の祖先ではない

と考えられるようになているようです



始祖鳥の化石が発見された1861年当時は

羽毛をもつ生物は鳥類しか知られていなかった

このため「始祖鳥こそ鳥の祖先である」という考え生まれ

この考えが長く支配してきたそうです



始祖鳥  転写




ところが近年、中国を中心に羽毛恐竜の発見が相次ぐと

もはや羽毛は鳥類の証明ではなくなり


始祖鳥の足の親指が、現在の鳥類と同じように

枝をつかみやすいよう後ろ向きについていないことが確認され

これまで考えられていたよりも

恐竜に近い存在であったことが判ったそうです



また「恐竜は絶滅したのではなく、鳥類に進化したのである」

という人がいますが

恐竜の絶滅するずっと以前に、鳥類は誕生していたようです





恐竜も恒温動物であったとする説もあります


例えば、生まれたときに体長1mだった

ブラキオサウルスは20年ほどで25mに成長します


恐竜がエネルギー消費の少ない変温動物だとしたら

これは驚異的なスピードになると主張されたり


それから恐竜の子孫である鳥類が恒温動物であることからも

恒温動物だったと主張されるようです



恐竜も鳥と同じ気嚢(きのう)を用いた呼吸をしていた

と考えられることから

この呼吸のシステムが、恐竜を恒温に保っていたのではないか

とも言われています



ただ今でも、恐竜は

鳥類=羽毛を持つ恒温動物 に進化を遂げることにより

恒温性を手にすることができたというのが定説ではあるようです




なお、ウミガメやマグロなんかの体温は一定に保たれていて

逆にナマケモノやカッコウの体温は

気温や運動によって大きく変動するらしいので


必ずしも爬虫類、魚類、昆虫類=変温動物

哺乳類、鳥類=恒温動物 とは言い切れないようです




それから変温動物のトカゲなんかは、陽にあたって体温を上げ

活動温度を保とうとしますが


逆に恐竜は体が巨大なため

体温が上がり過ぎないように冷却するのに苦労しながら

活動していたなんて話もあります





巨大恐竜はどうやって自分の身体を支えていたのか

という問題があります


かつては、ブラキオサウルス(体長25m・体高16m)などの

巨大草食恐竜は水中で生活していたという説もあったそうです


今では、ブラキオサウルスの頭は体に比べてすごく小さいし

首の骨は華奢で、おまけに細かい穴がたくさんあいていることから

こうしたことで軽量化するとともにゆっくりと動くことで

骨が折れるようなことを避けていたと考えられています




〔 恐竜の中でも、特に獣脚類(ティラノサウルスやアロサウルス、鳥など)や

竜脚類(ブラキオサウルスなど)は

骨の中に中空の部分が多く、骨全体が軽量に出来ているという 〕




また、恐竜にも気嚢があったと述べましたが

恐竜が気嚢を進化させた理由は

低酸素時代を生き抜くためだったと考えられています


鳥の気嚢システムは、空を飛ぶために進化させたのではなく

恐竜から受け継いだものを利用したということで、羽毛と一緒ですね




また、恐竜から鳥に進化したというのでは

「恐竜の骨がなぜ中空なのか説明しづらい」

「二足歩行する恐竜がいることも説明しにくい」 →


「恐竜から鳥が進化したのではなく、逆に鳥から恐竜が進化した

鳥の進化の過程で枝分かれした種が、恐竜となって繁栄した」

という説もありますし


「ムササビのような、樹上生活をする爬虫類が

本格的に空に進出して鳥になり

一部は樹から地上に降りて二足歩行型の恐竜になった」

なんて説もあるようです





なお、トカゲと恐竜は、共通の祖先を持っているというだけで

トカゲやワニが恐竜の子孫ではないそうです


現生の爬虫類の中で

恐竜と分岐したのが一番近いのはワニで


ワニは、主竜類〔現生ではワニと鳥類、過去においては恐竜〕

に分類されています



トカゲやヘビのグループの有鱗目〔双弓亜綱の鱗竜形下綱の有鱗目〕は

それよりも遠いです



カメは、かつては爬虫綱でも初期に分化したグループの

無弓亜綱に分類されていました


恐竜とはずっと遠い共通の祖先を持つとされていました


ところが近年は形態や発生学の研究から双弓亜綱に含まれる

とする説が有力となり


さらには分子系統学的解析から、主竜類もしくは

主竜形類〔主竜類にいくつかの絶滅爬虫類を加えたグループ〕に

含まれると推定されているそうです




生物史 Ⅲ





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