緋山酔恭「B級哲学仙境録」 生物史 Ⅲ



B級哲学仙境論


生 物 史


 




生物史 Ⅲ




生物史 ⑦



石炭紀(約3億6000万~約2億9500万年前)の中期に

爬虫類に類似した両生類(爬形類)の中から


発生の初期段階に胚が羊膜を持つことで

陸上での産卵が可能となったグループ=有羊膜類が現れます


有羊膜類は両生類とは違って、陸上生活に完全に適応したため

急速に分布を広げ、やがて爬虫類へとつながる竜弓類と

哺乳類へとつながる単弓類(哺乳類型爬虫類)に分かれたとされます


分岐した時期も石炭紀の中期と考えられています


そして、単弓類から哺乳類へと進化するものが登場します



爬虫類と哺乳類の違いは、ふつう卵生か胎生か

あるいは変温動物か恒温動物かの違いだと思われていますが


哺乳類のカモノハシは卵生であるし

また、ウミガメのような恒温性の爬虫類がいる一方

ナマケモノのような変温性の哺乳類がいます



そうなると何をもって爬虫類と哺乳類と分けられるの?

ということになりますが


分類は人間が便宜上しているものなので

ボーダーライン(境界線)に位置するようなものも出てくるわけです





恐竜が繁栄する以前、陸上で頂点を極めていたのは

我々の祖先にあたる哺乳類型爬虫類(単弓類)

という存在であったらしいのです


この哺乳類型爬虫類は

骨や歯の構造が哺乳類に近い爬虫類で

体毛を持っていた可能性が高いそうです



ディメトロドン(体長3mを超える。帆を持つ)などを含むグループは

同サイズの獲物を狩る陸上では初の捕食者で

陸上生態系の頂点に立っていたといいます



ディメトロドン  ウィキペディアより


背中に大きな帆を持っているので

太陽熱を他の種よりも早く集める事ができ

朝の早い時間帯に

まだ動きの鈍い動物たちを捕食していたといいます




この爬虫類型哺乳類のうち、人類に進化していくのは

キノドン類(犬歯類)というグループだそうです



キノドン類  ウィキペディアより



キノドン類の最大は

キノグナトゥスというオオカミ大の肉食動物といいます




ところが、2億5千万年前に

シベリアで日本の国土の10倍にあたる地域で


地下のマグマが噴出する

「スーパープルーム」という現象が起こります


それによってなんと生物の95%の種が滅亡したとされています



こうして地球史上初めて築かれた

豊かな生態系が破滅してしまったそうです



もちろん我々の祖先のキノドン類は生き残ったからこそ

今ここに人類は存在するのですが・・・




スーパープルームによって

たくさんの二酸化炭素が放出され


温室効果のある二酸化炭素が増加し

海の温度が高くなった →


海底から二酸化炭素よりはるかに

高い温室効果をもつメタンガスが発生 →


さらに気温が上昇し

またそれがメタンを発生されるということになった →


地球が高温と低酸素に陥った


これによって95%の種が滅亡したそうなのですが


この低酸素の地球で繁栄したのが、恐竜です


恐竜は、我々の祖先である

哺乳類型爬虫類が頂点にあった時代には

小さなトカゲのような存在であったといいます



恐竜は、気嚢(きのう)による呼吸のシステムを持っていたとされます

気嚢を持った爬虫類です


我々哺乳類やその他多くの陸生の脊椎動物の呼吸は

鼻や口から入った空気が肺をみたし


肺では酸素と二酸化炭素のガス交換が行われ

二酸化炭素が鼻や口を通って排出されます




鳥の場合、多くの種で9つも気嚢を持つといいます


鼻や口から入ってきた空気の半分は

そのまま体の後部にある気嚢に入ります


もう半分は、肺を通って前部の気嚢に入り、鼻や口から排出されます


すると同時に、後部の気嚢に入った空気が肺に送られます



哺乳類の肺は、ガス交換と

ガスの吸入・送出というポンプの機能を果しますが


鳥類の肺はガスの交換だけを行い

ポンプ役目は、気嚢が果たすわけです



こうして気嚢システムでは、吸うときだけでなく吐くときも

肺をきれいな酸素で満たすことが出来ます


このため低酸素の地球で有利だったとされます



現在このシステムをもつのは、鳥類です

鳥は恐竜の子孫とされています


鳥が、酸素の少ないヒマラヤやアルプス上空を

飛ぶことができるのも気嚢を持つことによるといいます




一方、我々の祖先の爬虫類型哺乳類のなかには

トリナクソドン〔ネコほどの大きさの小型肉食動物

昆虫や小動物などを捕食〕

のように、低酸素に対応するため、腹部にあった肋骨がなくなり

(肋骨は胸部だけでなく腹部にもあった)


横隔膜という筋肉の膜を手に入れ

横隔膜によって多くの酸素を肺に取り込めるように

進化したものもあらわれたそうです


しかし気嚢の方が、呼吸のシステムとして勝れていたことから

恐竜が陸上の支配者となったとされます




トリナクソドン  転写





また、この低酸素に適応し

横隔膜を手にした哺乳類型爬虫類の中から

有利に子孫を残すために、子供に母体内で栄養を与え

ある程度発達させてから生むという

胎生の哺乳類が誕生したといいます





現在見つかっているなかで最古の哺乳類は

アデロバシレウス(目立たない王の意)という

ネズミみたいな生物で2億5千万年前に生息していたらしいです



アデロバシレウス  ウィキペディアより



但し、アデロバシレウスは恒温性を獲得したことから

最古の哺乳類とされますが

繁殖は卵を産んで行われていたそうです




最古の有胎盤哺乳類は1億2500万年前に登場した

エオマイア〔黎明期の母・中国名 始祖獣

中国で体長10cmのほぼ完璧な姿の化石で発見〕

というやはりネズミのような生き物です




エオマイア  ウィキペディアより


エオマイア化石(レプリカ)  ウィキより



このエオマイアが


卵生のカモノハシ目

〔孵化した子は

他のすべての哺乳類と同じように母乳によって育てられる〕と


有袋類〔カンガルー、コアラ、フクロネズミ、フクロネコ

フクロギツネ、フクロモモンガ、フクロモグラ、フクロアリクイなど

胎盤(母体と胎児を連絡する器官)を持たないため

子宮で子供を育てることができない〕

を除く


全ての哺乳類の祖先だといいます






なお恐竜の絶滅は、直径10キロ、エベレストなみの巨大隕石が

ユカタン半島(メキシコ湾とカリブ海に突き出た半島)に

衝突したことが原因とされています


秒速20㎞で地球に衝突し

直径200㎞ぐらいのクレーターを作ったされます



隕石衝突により、1時間ほど続く地震、数百mの高さの津波

大規模な火災などが発生したそうです


さらにそれに続く急激な気温低下が起きたといいます



気温の低下は、隕石の衝突によって砂塵が大気圏にまきあげられ

太陽の光がさえぎられたことにより起きたようです


この地球が黒い幕で覆われた状態は、数ヶ月から

2、3年続いたと考えられています



但し、一時的には気温がマイナス30℃まで下がったという考えと

炭酸ガスが生成されて

温室効果がおこり、温度が上昇したという考えとがあります



いずれにしても、光合成のできなくなって植物は枯れ

植物を餌とする草食恐竜が餓死し

草食恐竜を餌とする肉食恐竜も餓死していったようです




この隕石衝突による絶滅説は

白亜紀末(6500万年前)の地層(KT境界線と呼ぶ)に


地球には稀少で隕石に多く含まれているイリジウムという金属が

高濃度で存在していること


そしてこのKT境界線を境に、恐竜が忽然と姿を消していること

が根拠となっています



また、KT境界線には、イリジウムが世界的に高濃度の割合で

存在しているそうで

これは衝突した隕石が世界中に飛び散ったからだと考えられています



それから、このとき恐竜ばかりでなく

全生物種の70%あるいは75%が絶滅したといいます





地球は、何度も巨大隕石の衝突にあっているといいます

また、地球全体が凍りつく全球凍結(22億年前と6億年前)や

スーパープルームで95%の生物の種が絶滅した

ことなども経験しています


このようなことはいずれまた起こるこで、いわば自然のことです



また、地球上の各大陸は、集合する方向にむかって

年に数センチほど移動しているといいます


2億年後には1つの大陸になるそうです


大陸どうしがぶつかると、地下よりマグマが噴き上がり

その高さは3千メートルにも達するらしいです


放出されるガスによって多くの生物を死滅させるといいます


そして今度は、大陸の分化がはじまるといいます


地球はこのようなことを繰り返しているわけです


プレートテクトニクス・マントル対流説







生物史 ⑧



恐竜時代の哺乳類は小さくて寿命も数年程度だったそうですが

恐竜の絶滅によって「適応放散」し、多様な進化を遂げます



哺乳類の進化・多様化と、被子植物(花をつける植物)の

進化・多様化と深い関係があるとも言われています


被子植物の進化は、花の蜜を餌とする昆虫類の

進化・多様化を急速に進めました


被子植物と昆虫とは互いに影響し合って進化していったといいます



これにともなって

昆虫を餌とする哺乳類も種類を増やしていったそうです



我々はあまり昆虫を食べなることはないですが

サルも昆虫に対する嗜好性は高く

セミや毛虫を捕まえて食べるといいます



また被子植物は、種子を果肉で覆います

これが哺乳類の餌となるので

その意味でも哺乳類の進化や多様化に貢献した

と言われています




恐竜の絶滅後「適応放散」により哺乳類は繁栄し

あるものは草原や森へ、あるものは海へ

そしてあるもの(コウモリ)は空へと進出していきました



なお、コウモリは、進化の成功者と言われています


哺乳類は世界中に、およそ4000~5000種

(細かい数は、研究者の分類の仕方で違ってくる)

いるそうですが


このうちコウモリが1000種を占めているといいます



日本には、陸上に住む哺乳類がおよそ100種類いて

このうちコウモリが33種、1/3がコウモリだといいます



コウモリがここまで繁栄できたのは

鳥類がごく一部を除いて活動しない夜間に

活動の場を求めたことによるようです







我々の先祖となった原始食虫類は

昼は岩陰や木の葉の下に潜み

夜に餌を求めて地上を徘徊するような生活から


捕食者(爬虫類や原始鳥類)に対する適応収束として

木の上に逃れたと考えられています


これにより霊長類(サル目)へと進化していくわけです




恐竜が繁栄していたときに、ひっそりと生きていた動物の中に

虫を主食とする原始食虫類(原始モグラ目)と呼ばれる

ネズミぐらいの大きさの哺乳類がいて


この原始食虫類から

霊長類と食中類(モグラ目)が分岐したと言われています




● 食虫類


モグラ目はかつて使われた哺乳類の1目で

食虫目、食虫類とも呼ばれた


現在では、トガリネズミ目やハリネズミ目に分類されている


モグラ、トガリネズミ、ハリネズミなどがいる。

これらはネズミと称するが、げっ歯類(ネズミ目)ではない




トガリネズミ  転写


トウキョウトガリネズミは

トウキョウといっても国内では北海道に分布

しっぽを除いた体長は約5センチ

しっぽの長さは約3センチ、体重は約2グラムしかなく

「世界最小の哺乳類」などと形容されます




ネズミ目は、現生の哺乳類全種

(4300~4600種)の約半数の2000~3000種を有する

ネズミ、リス、ビーバー、ヤマアラシ、カピバラなど




霊長類が、他の哺乳類から分かれたのが

6500万年前だと言われています


最も原始的な霊長類の化石が

北米で、恐竜の大絶滅直後(約6500万年前)の地層から見つかっています


この生物は、プレシアダピスと名付けられています


キツネザルのような姿をしているようです



なお、プレシアダピスには、霊長類とは思えないような特徴として

ネズミやリスなどげっ歯類(ネズミ目)の「切歯」と

同じような歯を持っているそうです



 プレシアダピス 転写



このことから1960年代には、多くの研究者から

「げっ歯類は、プレシアダピス類つまり霊長類から進化した」

という主張がなされたそうです



その後、最古のげっ歯類の化石の発見により

げっ歯類はアジアで誕生したことが判り


両者(げっ歯類とプレシアダピス類)は

似たような食べ物を食べていたため

歯の形や構造が似ただけであると考えられるようになったといいます



ところが、2000年代に入ると遺伝子分析の技術が進み

霊長類とげっ歯類が系統的に近いことが判ってきて


サルとネズミの関係について

再び議論がなされるようになったようです





それはともかく、プレシアダピスのような原始的な霊長類が

木の上での生活に適するように

体を進化させてサルへと進化していったようです



木から木へ飛び移るときの距離を正確に測るため

さらに、枝を正確につかむ必要から

また虫を正確にとらえるために

視覚を発達させました


目を顔の前に並ぶように進化させたのも

食虫類との大きな違いとされます


これによりモノをより立体的に見ることができるようになりました



例えば、片目を閉じた状態で

左右の手に持ったペンを近づけていき

その先をぴたりとあわせようとしてもなかなかできません


両目を開いてするとこれができます


これは片目のときよりも両目のときの方が

モノをより立体的に見ているからだそうです


つまり、2つの目が同じものを見ることで

モノをより立体的に見ることが可能となるというわけです



動物のように左右の目が離れていて別々なモノを見ていたら

それができないわけです



また樹上生活に適応して、手足も発達させます

これは枝から枝に飛び移ったとき、枝をつかむ必要からだといいます




一方、樹上生活により

風にのって届く捕食者のニオイを遠くから知る必要がなくなった

また、敵のニオイが樹の上に達することもない

といったことから嗅覚が退化し

ハナズラがしだいに短くなっていったとされます


両目で同じモノを見るには

顔が平たい方がよく、ハナズラは邪魔です


ハナズラが短くなっていったのは

立体視を発達させるのにも都合がよかったようです



その後、人類へと進化しゆくサルが地上に降りても

優れた嗅覚を取り戻すことはなかったそうです


このため人間の五感の中で、嗅覚が最も劣るとされます





また、たいがいの陸上の動物は

地上で生活していて、果物を食べる機会がありません


そこで体内で、ビタミンCを合成できるように

進化してきたわけです



これに対し、人間が、体内で

ビタミンCをつくり出せないというのは


我々の祖先が

猿のような樹上生活をしていて

果物を食べることで、ビタミンCを得ていた

ことに由来するそうです




生物史 Ⅳ




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