緋山酔恭「B級哲学仙境録」 生物史 Ⅳ



B級哲学仙境論


生 物 史


 




生物史 Ⅳ




生物史 ⑨



サル類のことを「霊長類」といいます


「霊長」とは不思議な能力を持ち

頭(かしら)となるべき優れたものという意味で

「人間は万物の霊長である」と使われます



地球上には、約220種の霊長類(サル目)がいて

現生の霊長類は、≪原猿≫と≪真猿≫に分けられてきたました



かつては、原始的な

キツネザル類(マダガスカル島固有)・

ロリス類(アフリカ大陸と東南アジアに分布)・

メガネザル類(東南アジアに生息)をまとめて「原猿」


それ以外のいわゆるサルらしいサルを

「真猿」(ヒトを含む)としていました



現在では、メガネザルが、真猿類に近いことが判明したので

キツネザル類とロリス類をまとめて「曲鼻猿類」



 
 ワオキツネザル  転写   スローロリス  転写 


キツネザルは、マダガスカル島の固有種


スローロリス属は

バングラデシュ、アッサムからベトナム

マレー半島、ジャワ島、ボルネオ島などに分布





メガネザル類を含む

その他の霊長類(ヒトを含む)を「直鼻猿類」と呼びます



        
 ニシメガネザル 転写    アイアイ  転写


メガネザルは、東南アジアの島々に分布


童謡で知られる アイアイは、マダガスカルの固有種で

キツネザルの仲間あるいはキツネザルの仲間に近い種とさている





また、ヒトと類人猿を除く「真猿」は


南アメリカ、中央アメリカの熱帯・亜熱帯に住んでいる

「新世界ザル」(鼻孔の間隔が広いので広鼻猿ともいう)のオマキザル科

〔オマキザル・リスザル・マーモセット・タマリンなど〕と




アフリカ、インド、 東南アジア、日本などに生息する

「旧世界ザル」(鼻孔の間隔が狭いので狭鼻猿ともいう)のオナガザル科

〔ニホンザル、マントヒヒ、マンドリル、テングザル

キンシコウ、カニクイザルなど〕に分けられます




4000~4500万年前に「真猿」が登場し

3500万年前頃に「新世界ザル」と「旧世界ザル」に分かれたとされます


「新世界ザル」は約2500万年前に

アフリカ大陸から大西洋を木などにつかまって渡り

南米大陸に侵入したと考えられています




旧世界ザルが

オナガザル → テナガザル → チンパンジーへと

大型化の進化を遂げたのに対し


新世界ザルは、森林にとどまり小型化の進化をたどったそうです




「旧世界ザル」は、アフリカで誕生し

葉食性のコロブス類(テングザル、キンシコウなど)と


果実を中心とした雑食性のオナガザル類

(ニホンザル、マントヒヒ、マンドリル、カニクイザル、バーバリーマカクなど)

に分かれて進化していったといいます




2400万年前には「旧世界ザル」と

「ホミノイド」(テナガザルを含む類人猿の祖先)が分化します



 シロテテナガザル  転写





はじめは、ホミノイド(原テナガザル)の仲間の方が繁栄したそうですが

1500万年前?以降は、旧世界ザルが繁栄し

テナガザル系のほとんどが絶滅したそうです



とはいえ1500~1000万年前に、ホミノイド(原テナガザル)から

大型類人猿(人類・チンパンジー・ゴリラ・オランウータンの共通祖先)

が分化したとされます


類人猿の起源もアフリカ大陸で

その後ユーラシア大陸に進出したとされます




よく「ヒトはサルから進化した」と言いますが

現生のサルからヒトが進化したわけではなく


現生サルとヒトは、共通の祖先(サル)から分化し

それぞれに進化して現在に至ったということです




ちなみに、ヨーロッパにはサルがいないらしいです


ヨーロッパには

イベリア半島の南東端に突き出したジブラルタルに

バーバリーマカク〔オナガザル科。人為的に移入され野生化

イスラム教徒が持ち込んだらしい〕の1種しかいないといいます


北米には全く生息していないといいます



サルがヨーロッパや北米から姿を消したのは

寒冷化または乾燥化のため

ヨーロッパのサルはアフリカとアジアへ

北米のサルは中南米に移動したからだといいます



そして


氷河期には多くの動物が絶滅し

温暖期になって、アジアには熱帯から多くの生物が北上してきた


その中にサルもいた

しかし、ヨーロッパでは地形がこれを阻んだ


北米では、氷床が最後まで残り

サルの生活環境となる広葉樹林が発達しなかった


このため中南米からサルが北上しなかった


などといった説があります






ヒトの定義ってなんなの?


チンパンジーやオランウータンも道具を使えます


野生のチンパンジーも石

を使って硬い木の実を割ることが知られています


なので一般には直立二足歩行を長時間できるかできないか

で判断されます




一方、類人猿は

ヒトに似た形態を持つ霊長類で、高度な知能を有し

社会的生活を営んでいるものをいうそうです


サルには尾があり、類人猿には尾がないという大きな違いがあるそうです


小型類人猿(テナガザル科・東南アジアに生息)と

大型類人猿〔オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボ、(ヒト)〕

に分かれます



さらに大型類人猿は、ゴリラ、チンパンジー、ボノボ、(ヒト)

の「アフリカ類人猿」と


オランウータン

〔他の類人猿がアフリカ大陸に生息するのに対し

東南アジアのスマトラ島とボルネオ島の熱帯雨林にのみ生息〕

の「アジア類人猿」に分かれます


アジア類人猿で現生するのはオランウータンだけですが

絶滅種のギガントピテクスなども含まれるそうです



【 ギガントピテクス…

身長約3m、体重300~540㎏

約100万年前~約30年前に

中国、インド、ベトナムなどに分布していた史上最大の類人猿


イエティ(ヒマラヤ山脈に住むと言われている未確認動物)や

ビッグフッド(サスクワッチ。アメリカ・カナダのロッキー山脈一帯で

目撃される未確認動物)は、ギガントピテクス属であると考える人もいる 】





類人猿の中では、テナガザル(90%) → オランウータン(93% )→

ゴリラ(96%) → チンパンジー(97%)およびボノボの順に

ヒトと近縁になるそうです 〔 ()は現生のヒトとの遺伝子DNAの共有度 〕



ヒトは、1300万年前にオランウータンの祖先と分かれ

700万年前にゴリラの祖先と分かれ

600万~500万年前にチンパンジーとボノボの祖先と分岐したそうです



移動のさい、ゴリラがナックルウォークをするのに対し

オランウータンは、完全四足歩行をします





【 ボノボ・・・


ヒト科チンパンジー属は

チンパンジー(3種・全てアフリカに生息)と、ボノボの2種で構成される


ボノボは、ピグミーチンパンジーとも呼ばれる

オスが40㎏・メスが30㎏くらい


アフリカ中部のコンゴ民主共和国の

低地のある熱帯雨林に生息する固有種


チンパンジーよりも直立二足歩行が得意で

食物を運ぶときなどに数10メートル二足で歩くことがある


知性はチンパンジーよりも高いと考えられているが

野生での道具の使用は報告されていない


人間だけが行うと考えられていた正常位での性行為が報告されている


チンパンジーとは異なりボノボ同士の闘争はほとんど観察されていないが

他のサルを狩ることfはある


飼育したボノボは、薪を集めてマッチで火をつけてたき火をしたり

そのたき火でマシュマロを焼いたり

特殊なキーボードを使って人間と会話したり

コンピューターゲームのルールを理解して遊んだりもするという 】






ヒトとチンパンジーの共通祖先の群れが2つに分れてから

10万年くらいは、姿形はほとんど一緒だったようです


しかしチンパンジーが森にとどまったのに対して

ヒトは平原に進出し、長い時間をかけて環境に適応していきました



チンパンジーももちろん進化しましたが、祖先と同じ森に残ったために

それほど大きくは変わらなかった


これに対してヒトは大きく進化を遂げ

20万年くらい前に、現代人と同じ特徴を持った生物

(新人・現生人類=ホモ・サピエンス)が現れたとされます







生物史 ⑩



ナックルウォーキングをしていた化石類人猿から

直立二足歩行のアウストラロピテクス類が出現したのが400万年前


現生のヒトの系統であるホモ属が出現したのは200万年前


ホモ属は東アフリカで進化し100万年前にはアフリカ大陸を離れ

ユーラシア大陸に進出します


アメリカ大陸に拡大したのは2万年前?だそうです


その間の、20万年前には、今の人類

ホモ・サピエンス(新人)が誕生しています



ホモとは人類のことで、ホモ・サピエンスとはラテン語で

「考える人」「思考する人」「知性の人」「叡智の人」の意味らしいです





人類の歴史の大きな流れとしては


猿人〔アウストラロピテクス(南の猿の意)属など〕 →


原人〔ホモ・エレクトス(直立する人の意)

ジャワ原人(ホモ・エレクトス・エレクトス)や

北京原人(ホモ・エレクトス・ペキネンシス)など〕 →


旧人〔ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)など〕 →


新人(ホモ・サピエンス)とされます





それから、DNA解析の進展の結果、ヒトと類人猿

特にゴリラ属・チンパンジー属との遺伝的距離が小さいことが分かり

両者もヒト科に分類されるべきだ

という意見が主流を占めることになったそうです



最新の分類案は

ヒト科を「オランウータン亜科」と「ヒト亜科」に分類する方法で

ヒト亜科の下に「族」「亜族」という分類群を作ります



まずヒト亜科をゴリラ族と

ヒト+チンパンジーとの族(ヒト族)に大きく分けます


つぎにヒト族の亜族として、ヒト亜族とチンパンジー亜族を置きます


ヒト亜族に、アウストラロピテクス属や、ホモ属などを分類します


またオランウータン亜科には、オランウータン属や

ギガントピテクス属などが含まれます






人類誕生については


ヒトとチンパンジーの共通の祖先のうち


乾燥化などによって森林が減少し

食糧不足が起きたことから草原へ進出していった

個体また群れが、人類へと進化していった


これに対して、森林に残った個体、群れが

チンパンジーへと進化したという

「人類草原誕生説」(サバンナ説)が主流です




しかし近年、遺骨の調査の結果

森林の中で二足歩行するサル

つまり人類が誕生したとも考えられるよってきたようです



しかもかつては

人類はアフリカのエチオピア地域で誕生したと

考えられていましたが、そうでもないらしいのです



これまでの説によると

地殻変動により山脈が出現し、この山脈により西風がさえぎられ

それまで森林であったエチオピア地域の雨量が減り、草原化たし


それにともなって人類の祖先が草原へと進出し

二足歩行をはじめて人類へと進化したとされます



ところが最近では

アフリカ全域で二足歩行するサルが誕生した

可能性も考えられているそうです




二足歩行するようになった理由は?


草原に進出したサルは

はじめは四足歩行(ナックルウォーク)だったはずで


なぜ直立二足歩行するようになったかは

よく判っていないようです


肉食獣に食べられる危険を冒して草原に進出したわけですから

敵を早く発見するため、遠くがよく見えるように立ったとか


アフリカは暑いため地面に接する部分を少なくするために立ったとか


道具を使うため=手を使いやすくするために立ったとか 

言われてはいます




また二足歩行では、大きな脳を支えることができるので

脳容積が飛躍的に増大していったとか


立って遠くを見ることにより自と他を区別

さらにはモノを区別する意識が強まり

大脳を発達させていった などとも言われています






猿人は600万年前にアフリカ大陸に出現したといいます


ナックルウォークしていたサルから

二足歩行をはじめことで、人類が誕生したわけです



猿人のアウストラロピテクス属は

約400万年前~約200万年前にかけて生存し


脳の容量は現在の人類の1/3程度の500~600ml

(チンパンジーの400mlと大差ない)


身長も110㎝~150㎝でチンパンジーなみだったといいます




180万年前頃には、原人が登場し

原人は後期には

脳の容量を1100ml~1200mlにまで増大させています


原人の特徴としては石器の使用があげられています





また、言語の使用も脳の増大に貢献したようです


言語の使用の時期は明確には分っていませんが

頭蓋骨の変化などから原人段階であろうと推定されています


原人の頭蓋骨には言語をコントロールする部位といわれる

ブローカ野の痕跡が認められるそうです




言語の発達は

完全な直立二足歩行を行うようになったために喉頭が下がり

それによって類人猿並みだった音声路が

現代人の8才児程度の音声路に変化したため との説があります



コミュニケーション能力の発達と

思考能力の発達(脳容積の増大)は表裏一体で

それが人類の生息域の拡大に大きな役割を果たしたようです







ネアンデルタール人(旧人)は

ヨーロッパから中近東にかけて生存したといいます


ホモ・サピエンスに最も近い種で

ドイツのネアンデル谷(タール)で化石が

最初に見つかったことからの名前です


脳の容量は、ホモ・サピエンスが1400ml程度なのに対し

1400~1600ml、最大で1700mlに達したといいます



また、肉体的には

ネアンデルタール人の方がはるかに頑強であったといいます


高度な道具を製作したり

火の使用もできたり、死者を埋葬することまでしていたそうです



但し、新人(ホモ・サピエンス)に比べ

精神生活を司るとされる前頭葉の発達が悪かったとされます



また、喉の構造からも複雑な音声は出せなかった

まり複雑な言語体系はなかったと考えられていいます



30万年前ころに登場し

2万年数千年前ころまでは生存していたとされ


眼の上の出っ張りが大きいとか

おとがい(下あご)が小さいなどの特徴はあるが


新人との見かけ上の差は小さく

服を着ていたら分らないほどだったと考えられています



ホモ・サピエンス(20万年くらい前にと誕生)と

ネアンデルタール人が友好関係にあったか敵対関係にあったか

関係せずにいたかはよく分っていませんでしたが


最近の報告によると

アフリカを出たホモ・サピエンスと

ネアンデルタール人とは交雑し


アフリカ以外の地域の人類に

その遺伝子が1~5%残っているといいます



アフリカ出たホモ・サピエンスが

中近東でネアンデルタール人と交雑し

世界に散らばっていったといいます



また、ホモ・サピエンスが複雑な言語体系を持っていたことが

現在まで生き残った原因と考えられています







●  種とは?



白人も黒人も同じ「種」の人間なの?


ふつう「種」とは交配可能なグループをいうそうです


人間の場合、全ての人種間で完全な交配が可能です


ただ、現在のホモ・サピエンスには、亜種を設けてはいませんが

人種は亜種に相当すると考える研究者もいるそうです



亜種?


例えば、クワガタの場合

オオクワガタとコクワガタ(オオクワガタ属コクワガタ亜属)の雑種や

日本産ヒラタクワガタと、外国産ヒラタクワガタの

雑種(亜種間雑種)が生まれることが分かっています



しかし、ミヤマクワガタとノコギリクワガタでは

人間とサルほどの遺伝的に距離があり雑種はできないそうです



カブトムシ〔コガネムシ科・カブトムシ亜科・カブト属〕の場合

日本固有の種ではなく


多くの亜種が南西諸島、台湾

東アジアから東南アジアにかけて生息していて


当然、亜種間で交雑が出来き、子も生殖能力を持つといいます


但し、同じカブトムシ亜科に属しても属が違えば交雑は起きません


つまり、異属間交雑は起きないというのがふつうらしいです



だから日本のカブトムシがたとえ

ヘラクレスオオカブト(ヘラクレスオオカブト属)や

アトラスオオカブト(アトラスオオカブト属)と

交尾しても子供は出来ないそうです




なお、犬や猫の「品種」は、亜種間による雑種ではありません


イヌ(イエイヌ)は

オオカミ(タイリクオオカミ・ハイイロオオカミ)の亜種です


犬やの「品種」(犬種)は、人間によって作り出されたもので

すべてイエイヌという亜種よりさらに下位の分類である

変種に過ぎないそうです



但し、イエイヌを、オオカミとは独立した「種」とみなす

古い分類では犬種は亜種とされていたそうで

現在でも、独立種としている研究者も少なくないといいます




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