緋山酔恭「B級哲学仙境録」 ソクラテス



B級哲学仙境論


ソクラテス


 



ソクラテス




ソクラテス(前469~前399)は


市民に対して

「雄弁な政治家や知識人に踊らされるな。彼らは何もわかっていない

正しいとは何か、幸福とは何んなのか、自分でちゃんと考えるべきである」


「そのためには、まずは自分が≪無知≫であるという自覚を持ちなさい」

(無知の知)


と、人々に呼びかけ、偏見を破り

真理に目覚めさせる対話(問答)運動を展開した

とされています



彼はこの問答を

真理に暗い者を目覚めさせるという意味から

「産婆術」(助産術)と言ったそうです




当時のソフィスト(知識人)たちは、街頭で大衆に

一方的に演説をするという形式で活動していたそうですが


ソクラテスだけは、街を行く人を捕まえては

対話しながら一緒に問題を追及して行くという形をとったとされます




クセノポン〔歴史家(著述家)。軍人〕が

街を歩いていると


ソクラテスがやってきて

杖で行く手をはばみ


「○○を手に入れるには、どこに行けばよいか知っているか?」

とさまざまな食料品についての質問を繰り返してきたそうです



クセノポンがいちいちそれに答えると

最後にソクラテスは


「では、立派な人になるためには

どこに行けばよいか知っているか?」と問います


クセノポンが答えられないでいると

「では、私のところで学びなさい」と言い


クセノポンはソクラテスの弟子になったといいます




とはいえ、ソクラテスという人は

独自の世界観を示したとか

深遠な哲学を説いたとかいったわけではありません


ただ、他人を批判し

「無知の知」を主張したにすぎないのです




そして、若者からの圧倒的な支持を受けるも

とらえられ


「若者を腐敗させた」

「国家の神々を信じず、新たな神霊をあがめている」

との嫌疑で裁判にかけられます


ソクラテス70歳でした



裁判は一般市民から選ばれた500人の裁判官によって行われ

360対140で死刑が宣告され


毒杯(毒にんじん)をあおることにより処刑されたのです



ただ死刑が行われるまで、1ヶ月も猶予が与えられ

逃亡することができたといいます



また毎日、ソクラテスのもとには、友人や弟子が詰めかけ

逃亡するように説得したそうです



国家も、ソクラテスを殺すよりも

逃亡させることで彼の名誉を傷つけることを望んでいた

とも言われています



ところが、ソクラテスは逃げることなく

最後まで自分の信念を貫いたのです



なお、ソクラテスは裁判で

死について問われ


「死によって魂は無に帰す」という考えと

「肉体は滅びても魂は生き続ける」という考え

があることを述べた上で


「どちらが正しいのかわからない」

「死んだあとのことは誰にもわからない」

「わからないものを恐れることは愚かである」と


死についても

無知を自覚することが大切だ

ということを主張し


そして「正しく生きた者にとっては

死は善きものである」と述べたといいます





ちなみに

ソクラテスの妻のクサンティッペは

世界三大悪妻の1人とされいます


ソクラテスはいつも

「屁理屈ばかりこねていなんで仕事しなさい」

とまくしたてられていたそうです



水を頭からあびせられて

「雷のあとは雨がつきものだ」と語ったとか



また、結婚に悩む青年に、ソクラテスは

「ぜひ結婚しなさい。よい妻をもてば幸福になれるし

悪妻をもてば私のように哲学者になれる」

と語ったとかいうエピソードもあります




そんなソクラテスでしたが

自分では一冊の本も書き残していないので

彼の思想は本当のところよく分かりません


ソクラテスについては

弟子たちの著作に頼るしかないのですが


ソクラテスを「人類の教師」にまで押し上げたのが

弟子のプラトン(前427~前347)です




プラトンは

ソクラテスを主人公とする「対話篇」

〔30篇。さまざまな論題について、対話形式で哲学的議論が交わされる〕

を残しています



プラトンの現存する著作の大半は対話形式を取っていて

一部の例外を除けば、ソクラテスが主要な語り手であるといいます




また、プラトンは40歳の頃、アカデメイア

〔学園・アカデミー(大学・研究所・学院などの総称)の語源〕を設立し

研究と人材育成につとめています


彼の学園は古代世界最大の名声を誇りました


それにともにない

ソクラテスは≪人類の教師≫としてあがめられることになったのです




万物のアルケーとピタゴラス




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