緋山酔恭「B級哲学仙境録」 仏教編 密教とはなにか? まるわかり 密教 Ⅱ



B級哲学仙境論


仏 教 編


 




密教 Ⅱ




別尊曼荼羅



また、両界曼荼羅とは別のタイプとして

別尊曼荼羅というものもあります



密教では


息災法〔そくさいほう・災害を除き、福徳を集める修法(しゅほう)〕


増益法〔ぞうやくほう・商売繁盛、学業成就、家門繁栄など

福徳や繁栄や智慧を増進させる修法〕


敬愛法〔けいあいほう・和合や

愛顧(あいこ・ひいきにされること)のための修法〕


調伏法〔ちょうぶくほう・降伏(ごうぶく)法ともいう

仏法や国土に害をなす悪人や敵国を屈服させる修法〕


を四種法とい


鉤召法〔こうしょうほう・諸尊や善神を召集する修法〕を加えて五種法といい

さらに増益法から延命法〔長寿、延命を願う修法〕を分離して六種法といいます




別尊曼荼羅は、これらの修法をはじめとして

悪霊退散、病気平癒、祈雨などに用いる曼荼羅で

じつに様々なものがあります



いくつか例をあげると

一字金輪(いちじこんりん)曼荼羅、仏眼(ぶつげん)曼荼羅

尊勝(そんしょう)曼荼羅、大仏頂曼荼羅

熾盛光(しじょうこう)如来曼荼羅


弥勒曼荼羅、愛染曼荼羅、法華曼荼羅

六字経曼荼羅(中央に釈迦金輪を配し、周囲に六観音をめぐらす)

宝楼閣曼荼羅(宝楼閣経によるもので

中心に七宝荘厳の宝楼を画き、これに釈迦如来を置く)


童子経曼荼羅、、閻魔天曼荼羅

請雨(しょうう)経曼荼羅、星曼荼羅、阿弥陀曼荼羅

仁王(にんのう)経曼荼羅、吉祥天曼荼羅、五大虚空蔵曼荼羅

孔雀経曼荼羅、八字文殊曼荼羅、十二天曼荼羅 などです




これらの図像のデザイン(諸仏の配置など)は

儀軌〔ぎき・諸尊の形象、供養の仕方、印の結び方

真言、儀礼の実地順序など

密教での儀式のきまりごとをを記した典籍〕で決められています






         
(福島市マンダラミュージアム展示品)    一字金輪曼荼羅 



一字金輪曼荼羅は

智拳印を結ぶ大日金輪の周りに、輪宝と七宝を描いています


七宝は、宝珠・象宝・馬宝・女宝・

主蔵宝(資産家)・主兵宝(優れた将軍)・仏眼仏母です



七宝の仏眼仏母は、一切を見通す仏の智慧の眼を尊格化したものです


仏眼を通して仏智が得られるため

仏眼は仏の母の徳をもつとし、仏眼仏母といいます


大日・釈迦・金剛薩埵(こんごうさった)の3種の仏眼仏母があるそうです




一字金輪曼荼羅の図像は

不空訳の「金剛頂経一字頂輪王瑜伽一切時処念誦成仏儀軌」

に従うとされます


また、この曼荼羅を用いた修法は、他の修法を圧倒するため

東寺長者だけが行うことができる最密の修法とされてきたといいます






仏の身体的特徴を示す八十種好(はちじっしゅごう・80の優れた特徴)

の1つに、無見頂相〔誰も仏の頂を見ることが出来ない〕があります



これに基づき、仏の頭頂にある広大無辺で

うかがい知ることのできない功徳を尊格化したのが、仏頂尊です



また、仏の三十ニ相(32の優れた特徴)のうちの

頂髻相〔ちょうけいそう・肉髻(頭頂部にある盛り上がり)をもつこと〕

が、尊格化されたともいいます






なお仏頂尊が、無愛想で不機嫌にも見えることから

「仏頂面」(ぶっちょうづら)という言葉が生まれたと考えられています





さらにその仏頂尊の中でも最勝とされるのが

金輪仏頂〔こんりんぶっちょう・一字金輪。一字頂輪王〕です


梵名は、エーカークシャローシュニーシャチャクラです



金輪とは、金、銀、銅、鉄の四輪(4つの輪宝)のうち

最も勝れるところからきていて


一字とは、金輪仏頂の種子(しゅじ)が梵字の1字「ボロン」であり

この一字に、全ての仏菩薩の功徳を収める

というところからきています


 
 ボロン





金輪仏頂には、2尊あり

1つは釈迦の仏頂より出現した釈迦金輪で

須弥山の上の月輪(白円光)または日輪(赤い月輪)の中に

赤い衣服をまとった釈迦如来が

定印の上に輪宝を置き、座している姿で表現されます




もう1つは金剛界大日如来の仏頂より出現した大日金輪で

日輪の中に描かれ、金剛界大日と同じく智拳印を結んでいます



金剛界大日は本来 月輪(白円光)の中に描かれ

日輪は胎蔵界を示すものです


なので、大日金輪は、金胎両部の大日を示しているとされます


金剛界大日如来が、胎蔵界日輪三昧という瞑想の境地に入って

唱えたボロンという梵字を、尊格化した仏とされます






       


仏眼曼荼羅は、三層の八葉蓮華があり

中央に宝冠を戴き定印を結ぶ仏眼仏母

第一層の八葉には一切仏頂輪王(仏眼仏母すぐ下)と七曜使者

第二層には八大菩薩、第三層には八大明王が描かれています






          


尊勝曼荼羅は、中心に金剛界大日如来

周囲に、八大仏頂〔大日の下が、尊勝(除障)仏頂で

他は、広大・極広大・無辺音声・白傘蓋(びゃくさんがい)・

勝・最勝・光聚(こうじゅ)〕を配しています


また下に、不動明王(三角)と、降三世明王(半円)

上方左右には、雲に乗った飛天が描かれます






     


熾盛光(しじょうこう)如来曼荼羅は、

蓮華の中心に、熾盛光如来を表す種子「ボロン」が描かれ

熾盛光如来の上の花弁に、一字金輪仏頂

そこから時計回りに、観自在、金剛手、毘倶胝

仏眼仏母(熾盛光如来の下・赤色)

不思議童子、文殊、救護慧の各菩薩が描かれています


周囲の月輪は、熾盛光如来の力を表現しているといいます


四隅、右上に金剛夜叉、右下に降三世、左下に軍荼利(ぐんだり)

左上に大威徳の四大明王が描かれています


〔不動明王が描かれていないのは

本尊(熾盛光如来?)と重なっているからだといいます〕



熾盛光如来とは、大日如来の仏頂尊で

仏身の毛穴から、火が燃え上がるように勢いで

光明を発すると如来だといいます






       
 大仏頂曼荼羅   吉祥天曼荼羅 


大仏頂曼荼羅は、須弥山の上

日輪中に大日金輪を描き、七宝をめぐらし


須弥山の左右には竹林と牡丹

手前(下方)の海中からは二大竜王と二大海神の出現


さらに大日金輪の上の月輪の中に

定印を結び金輪を置く釈迦金輪が描かれます





吉祥天曼荼羅は、左手には宝珠を捧げ

右手は与願印をとる吉祥天(福徳の女神)を中尊に

両脇に梵天と帝釈天、その上方に四天王


さらに上方には、散華供養(さんげくよう)する飛天と

雲に乗った白象が描かれていて


下方には、橋の架かった蓮池と

香炉を持ち供養している僧が描かれているそうです






   
 (福島市マンダラミュージアム展示品)   仁王経曼荼羅 


仁王経曼荼羅は

国家安泰を祈る仁王経法

の本尊とされ

中央には、不動明王が描かれています






          


荼枳尼天(だきにてん)曼荼羅は、白狐にのる荼枳尼天と

周囲に、動物をつれた十六人の童子などを描いたものです



荼枳尼天は、ヒンズー神話のダーキニーが

仏教にとりこまれたとされます



ダーキニーは、ヒンズー神話では

シヴァの妃 カーリーに仕える鬼女で


ダーキニーは、幻力を持ち

墓場に集まって肉を食べ、酒を飲み

音楽を奏して乱舞し、性交する宴をなします


また、カーリー(またはシヴァ)に

人間の心臓を生贄として捧げるとされます



なお、人に害をなす鬼女ですが

うまく扱えば恩恵をもたらすともされています



仏教には、夜叉女や羅刹女のたぐいとして取り入れられ

漢訳は、荼枳尼天(だきにてん)です



中期密教では

大日如来が化身した大黒天によって調伏されますが

死者の心臓であれば食べることを許可されているといいます


また、大黒天から「キリカク」という真言を授けられたとされます


大黒天の眷属(けんぞく)として、人間の死を6ヶ月前から予知し

死ぬまではその人を加護し、死ぬのを待って

その心臓を食べ、神通力を得るとされているそうです


人間の心臓には「人黄」という生命力の源があり

これが荼枳尼の呪力の元だといいます




神通力を得るため、また神秘的な力により大願を成就させるために

荼枳尼天を本尊として行う荼枳尼法という修法(しゅほう)があります


この修法は真言密教で行われましたが、外道視されてきたらしいです





左道密教(インドの後期密教)では、

霊能力をもつとされる

賤民カーストの女性たちのグループを

荼枳尼網(だきにもう)と呼び


彼女たちを万物を発動させる女性原理

さらには悟り生む智慧である般若波羅蜜とみなし


性的瑜伽(ゆが・ヨガ)することで、つまり性行為をすることで

悟りに至れるとされたといいます




日本では、ダーキニーは、狐の精であるとみなされ

稲荷神〔=宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ・倉稲魂神)〕

と同一視されました


狐は、古墳や塚に巣穴を作り

ときには屍体を食べることが知られていたこと


また人の死など未来を知り

これを告げると信じられていたことからだと考えられています


なお、宇迦之御魂神は

本来、食物神で、狐はこの神の神使(しんし)です




稲荷信仰には、神道系と仏教系の2系統があり

荼枳尼天を祀ることで有名なのが

豊川稲荷〔愛知県豊川市・曹洞宗 妙巌寺。本尊は千手観音

商売繁盛の神様として知られている〕です







       
閻魔天曼荼羅   摩尼(まに)宝珠曼荼羅


閻魔天曼荼羅は

除病・延寿・安産などを祈るために行う閻魔天供(てんく)法の本尊です




摩尼宝珠曼荼羅の

摩尼宝珠は龍王の脳から出現した玉で

あらゆる願いを叶えるとされ、密教で信仰されています


楼閣の中の三つの玉が摩尼宝珠で

2匹の龍王がこれを守護しています



ちなみに密教の七観音の1つ

如意輪(にょいりん)観音は、あらゆる願いをかなえる如意宝珠(摩尼宝珠)と

衆生の迷いを破る法輪(チャクラ)を持ちます


    両足裏をあわせる輪王坐をとり

1面6手で、右膝を立て

その上に置いた右手の第1手を頬にあて

左手の第1手は下げて地をなでます



左は、醍醐寺蔵 重文






       


童子経曼荼羅は、護諸童子経(ごしょどうじきょう)によるもので

乾闥婆(けんだつば)神王が、十五鬼神を縛しているそうです


十五鬼神が、裸の童子に近寄るさまざまな動物、女神などの姿で表されていて

幼児の健康と長寿を祈願する修法の本尊とされるといいます




乾闥婆は、八部衆の1つで

のちに四天王の持国天の眷属(部下)とされています


【 八部衆・・・ 仏法を守護する8種の衆生


竜、夜叉、阿修羅、乾闥婆(天の伎楽神)

緊那羅〔きんなら・半人半獣(馬頭人身)や半人半鳥の姿で表現される音楽神

乾闥婆とともに帝釈天、毘沙門天に仕えて歌舞音曲を演じる〕


迦楼羅(かるら・金翅鳥)

伽羅(まごから・大蛇の神格化。緊那羅とともに帝釈天に仕える音楽神) 】






     
孔雀経曼荼羅 
〔大進美術(株)さんのサイトから〕
   愛染曼荼羅




       

孔雀明王は、他の明王とは異なり忿怒相をとりません

(このため女性ともいう)

毒蛇を食す孔雀が尊格化されたもので

一切の害毒を除く尊格として信仰されるようです







        


      


愛染明王の梵名は、ラーガラジャー

ラーガは、情欲や愛染、また赤を  ラジャーは、王者を意味します


愛染明王を本尊として

敬愛・息災・増益・降伏などを祈願する修法を

愛染法(愛染明王法。愛染王法)といいます






 


請雨曼荼羅 (波間に仏や竜王を描く)は、空海が

平安京で祈雨の修法を行ったことにはじまる「請雨経法」の本尊です






         


星曼荼羅は、釈迦金輪を中尊とし

周囲に九曜や北斗七星をめぐらしたものらしく

北斗曼荼羅ともいいます



左の曼荼羅では、掌上に金輪をおく釈迦金輪が、須弥山に坐し


上方に、九曜〔くよう・太陽 、月、火星、水星、木星、金星、土星

月の昇交点(羅星・らごうせい)

月の降交点(計都星・けいとせい)を神格化した神々で

スーリヤ、チャンドラ、マンガラ

ブダ、ブリハスパティ、シュクラ、シャニ、ラーフ、ケートゥ〕


下方に、北斗七星をめぐらせています



中院には、十二宮〔牡羊座・牡牛座・双子座・蟹座・獅子座・乙女座・

天秤座・蠍座・射手座・山羊座・水瓶座・魚座の12の星座〕


外院には、二十八宿(月が日毎に宿る星座)が置かれます




        


星曼荼羅には、円曼荼羅の他に

方曼荼羅があります

こちらも中尊は、釈迦金輪で

釈迦金輪の下方に北斗七星を描いたものらしいです

(どれが北斗七星かよく分かりませんが)



人の運命を左右すると考えられている星々を供養し

災害からのがれ、長寿を祈る法会の本尊として用いられてきたそうです






         
 七星如意輪曼荼羅    妙見曼荼羅
(染川英輔画伯 作)


七星如意輪曼荼羅の七星如意輪観音は

「七星如意輪経」にもとづく如意輪観音で

北斗七星と、訶利帝母(かりていも・鬼子母神のこと)とを

眷属(けんぞく・部下)とします


中央に如意輪観音を置き

周りに、北斗七星と訶利帝母の8尊を

配置するなどした曼荼羅らしいです





 妙見曼荼羅の妙見菩薩は、人の運命を司るとされる

北極星を尊格化したものとされ、妙見尊星王(そんしょうおう)

北辰(ほくしん)妙見菩薩とも呼ばれます



北斗七星(北辰)が

人の善悪の行為を監視していて、天帝に報告する

それによって天帝が禍福を与える

という道教の思想に


仏教の思想が習合し

尊格に菩薩の名が付けられたと考えられています




インドの原始仏教(釈迦の仏教)では

星占いや星祭り(星に除災招福を祈る法会)を

禁じましたが、密教では受容されました




星祭り(星供養会)は

釈迦金輪を中尊とする「星曼荼羅」や

七星如意輪観音を主尊とする「七星如意輪曼荼羅」

妙見菩薩を主尊とする「妙見曼荼羅」を本尊とし


修法を行い、国家や個人の災いを除くものだといいます





密教の密教占星法は、当年星(とうねんじょう)と

本命星(ほんみょうじょうを柱としています



当年星は、個人の数え年によって

九曜と呼ばれる9つの星の1つが、交代で当年星になります


つまり、数え年の〇歳のときに、〇曜星に属していると決められています



そして、月曜星(進運)・木曜星(吉運)・水曜星(吉運)・

金曜日(生運)・日曜星(盛運) が良く


火曜星(休運)・計都星(死運)・羅喉星(潜運)・土曜星(開運) が悪い


大厄(男性数え42歳・女性数え33歳)は、火曜星である

などというようになっています



本命星とは、その人の持って生まれた年の星で

北斗七星の7つの星の1つがそれに当たります


生まれた年に、中心の役割をした星だといいます



星祭りは、当年星と本命星とを祀り一年間の幸福を祈願する密教の祭儀です



ちなみに、妙見菩薩は、日本では、眼病に霊験があるとされ

密教だけでなく、日蓮宗寺院でもよく祀られているといいます


密教では、眼病平癒のため修法の本尊としても用いられています






       


五秘密曼荼羅は、密教思想の「煩悩即菩提」を表現したもので

『理趣経』の曼荼羅のようです

(理趣経は、肉欲を肯定するところに特徴があります。後述しています)


中心の金剛薩埵(こんごうさった)に

欲金剛菩薩、触金剛菩薩、愛金剛菩薩、慢金剛菩薩が寄り添っています

これら四金剛菩薩は、それぞれ欲望を象徴しているそうです






        
八字文殊曼荼羅    十二天曼荼羅 


八字文殊曼荼羅 は、文殊菩薩・八大童子・四大明王などからなります


八大童子は、不動明王に随従する8種の童子です


慧光(えこう)・慧喜・阿耨達(あのた)・持徳(じとく)・

烏倶婆伽(うぐばか)・清浄比丘(しょうじょうびく)・矜羯羅(こんがら)・

制咤迦(せいたか)です




十二天曼荼羅は、中央に不動明王を配し、十二天を廻らしています


十二天は、真言密教の世界を守護する12の神々で

帝釈天(インドラ・東方の守護)、火天(アグニ・南東)

閻魔天(ヤマ・南)、羅刹天(ラークシャサ・南西)


水天(バルナ・西)、風天(バーユ・北西)、毘沙門天(クベーラ・北)

伊舎那天〔イシャーナ・北東。伊舎那天は大自在天の別名〕

梵天(ブラフマー・上)、地天(プリティビー・下)

日天(スーリヤ)、月天(チャンドラ)です






      
〔大進美術(株)さんのサイトから〕    五大虚空蔵曼荼羅 


 
 
胎蔵界曼荼羅 虚空蔵院  転写

虚空蔵菩薩を中心に22尊

左は、千手千眼観音菩薩

右は、一百八臂(いっぴゃくはっぴ)金剛蔵王菩薩



虚空蔵菩薩は智慧の菩薩として知られます


五大虚空蔵菩薩は

法界虚空蔵(中央、白色   金剛虚空蔵(東方、黄色)

宝光虚空蔵(南方、青色)  蓮華虚空蔵(西方、赤色)

業用(ごうよう)虚空蔵(北方、黒紫色)



「求聞持法」(ぐもんじほう)は

虚空蔵菩薩を本尊とし、記憶力を高めるために行う密教の修法で

聞持とは見聞きしたことを持しておく意


虚空蔵菩薩の真言100万遍を

50日または100日間に唱える修法で、最も難行とされるが

成就すれば、見聞きし学んだことは全て忘れないといいます






      


般若菩薩曼荼羅は、延寿・智恵・福徳のための

般若菩薩法の本尊として用いられるといいます


左の図像は、帝釈天(上)を従えた般若菩薩を中心に

外院に、四天王と十二神の十六神王を配してあります






      


法華曼荼羅は、法華経の世界(虚空会の儀式)を描いたもので

八葉蓮華の上に、多宝塔を描き

多宝塔中の右に釈迦牟尼仏、左に多宝如来が並ぶ


八葉蓮華の花弁には、弥勒菩薩・文殊菩薩・薬王菩薩・

妙音菩薩・常精進菩薩・無尽意菩薩・観音菩薩・普賢菩薩の8尊が配置される


ちなみに、日蓮の文字曼荼羅(十界曼荼羅)も

虚空会(こくうえ)をもとに描いたものです







以上、これらは一言でいうと現世利益を願うための曼荼羅といえます

別尊曼荼羅の方が、両界曼荼羅よりずっと歴史は古いのです


雑密(ぞうみつ)そのものですね



曼荼羅の起源は

野外に結界(けっかい)をもうけ、浄地と定めて

土で壇(だん)を築き、塑像(そぞう・粘土の像)を並べたて

儀礼を行ったことだと考えられています



作壇法や、曼荼羅の画像法は

儀軌〔ぎき・諸尊の形象、供養の仕方、印の結び方

真言、儀礼の実地順序など、密教での儀式のきまりごとをを記した典籍〕

にみられますが

インドではおそくとも5世紀頃には

別尊曼荼羅が成立していたと考えられています







密教以外の曼荼羅



密教以外の曼荼羅としては


浄土曼荼羅〔阿弥陀如来の西方極楽浄土を描いたもの〕


垂迹曼荼羅(すいじゃくまんだら)


宮曼荼羅〔本地仏や垂迹神を描かずに

神社境内の風景を俯瞰(ふかん)的に描いたもの〕


日蓮の文字曼荼羅(十界曼荼羅)などがあります




【 垂迹曼荼羅は、日本の神々はインドの仏菩薩が

日本の衆生を救済するために仮にあらわれたものであるという

神仏習合思想(本地垂迹説・ほんじすいじゃくせつ)に基づき

特定の神社の祭神を曼荼羅風に描いたもの

種類が多く、本地仏のみを描いたもの、垂迹神のみを描いたもの

両者を描いたものなどがある

熊野曼荼羅、春日曼荼羅、日吉山王曼荼羅など 】




           
 無量寿経曼荼羅 (浄土曼荼羅)    当麻曼荼羅 (浄土曼荼羅)





        
兜率(とそつ)天曼荼羅は

弥勒の浄土である兜率天の様子を描いたもの


密教の曼荼羅ではなく、弥勒信仰のものです


弥勒下生(げしょう)経においての弥勒菩薩は

釈迦の次ぎに仏になる菩薩です


釈迦滅後の56億7千万年のとき

兜率天(とそつてん)より地上に降臨し

釈迦の救済にもれた

300億近くの人を迷いから救うとされます
 兜率天曼荼羅 (浄土曼荼羅)    





          
吉野曼荼羅 (垂迹曼荼羅)    天河秘密弁財天曼荼羅



吉野曼荼羅は、垂迹曼荼羅で

中央に蔵王権現と対峙する

役行者(えんのぎょうじゃ・修験道の開祖とされる伝説的な人物)が描かれ

上方には、八臂の天川弁財天と、大峯八大童子が描かれているそうです


 天川弁財天と、大峯八大童子

童子は、童子形4体、鬼形4体のようです

弁財天の手前右の青い尊格は大黒点?




天河秘密弁財天曼荼羅は、吉野・大峯の山麓に位置する

天河大弁才天社に伝わる白蛇姿の弁財天を描いたものです


神仏習合思想のもと

密教曼荼羅図の影響を受けて成立したようです





 
 春日曼荼羅 (垂迹曼荼羅)    那智参詣曼荼羅 (宮曼荼羅)





     
 日蓮十界曼荼羅    チベット仏教
身口意具足時輪(カーラチャクラ)曼荼羅





 
 熊野勧心十界曼荼羅    熊野勧心十界曼荼羅


熊野詣が繁栄した理由の1つに

山伏や熊野比丘尼が

社殿や堂宇の修復のため勧進

〔かんじん・寄付をつのること。これにより善を積ませること〕をして

全国を遊行したことがあげられます



そのさい山伏や熊野比丘尼は

那智の滝と参詣の様子を描いた那智参詣曼荼羅や

熊野勧心十界曼荼羅を見せて絵解きをしたり

「熊野の本地」という話を語り聞かせたといいます





熊野勧心十界曼荼羅は、仏教の十界の世界を描いた図

上部に半円の道(そこを歩く人で人の一生を示す)

その下に仏菩薩、その下にあたる中央上部に心の字

その下には僧侶らによる施餓鬼会(せがきえ)の様子

下部に修羅、餓鬼、地獄を描いています


熊野比丘尼が主に女性信徒に対して

血の池地獄や不産女(うばずめ)地獄を絵解きをしたといいます





「熊野の本地」とは、熊野権現の祭神の由来物語で

15世紀に成立したといいます



内容は、インド中部のマカダ国の

善財(ぜんざい・善哉)という王に千人の后がいた

このうちの五衰殿(ごすいでん)は

王からの寵愛をうけ、他の后たちから妬まれる



五衰殿は懐妊するが、后らは人相を観る者を味方に引き入れ

「生まれてくる王子は7日目に鬼となり

王を殺害し国が乱れます」と奏上させる



王は武士たちに命じて五衰殿の首をはねさせるが

王子はその直前に誕生し、首のない母から乳を飲み

山の獣に育てられ、のちに麓の聖人に保護・養育される



7歳のとき、聖人はその子をともない王を訪れる

王子はそれまでの過去を打ち明け

秘法によって父の病気を治し、さらに母を蘇らせる



そして、女人の心悪しき国を嫌い

王子、父母、聖人の一行は、飛車で日本に渡った



日本でも住む地を求めてさすらい

ようやく紀伊の音無(おとなし)川の地にとどまり

熊野の神々になった


というものです




密教 Ⅲ




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