密教 Ⅲ 大日経と金剛頂経 大日経は、正式には 大毘盧遮那成仏神変加持経(7巻)といいます 7~8世紀頃成立したとされ 善無畏と 一行〔いちぎょう・中国人 金剛智と善無畏に師事。善無畏とともに大日経を漢訳〕 をはじめとする唐の学僧たちによって漢訳されたといいます 執金剛秘密主(しつこんごうひみつぬし)の質問に対して 大日如来が答える形をとります また事相と教相2つの部分から成りますが 教相に相当するのは、入真言門住心品(第1品)だけで あとの35品は、胎蔵曼陀羅、真言、密教の儀式など 実践を説く事相の部分だといいます 入真言門住心品では、執金剛秘密主の 「仏の智慧(一切智智・いっさいちち)とは何か」という質問に対し 大日が「菩提心(悟りを求める心)を因となし 衆生に対する大悲(慈しみ)を根本となし 衆生救済の方便を究竟(くきょう・究極)とする」と答え 凡夫の心がそのまま悟りに至ることを明かしているそうです 金剛頂経は、単一の経典ではなく18の異なる場所 別々の機会に説いた10万にも及ぶ頌(じゅ・詩句)をまとめたもので 一般にはそのうちの初会(しょえ)をいうそうです 初会の漢訳には、金剛智訳の金剛頂瑜伽中略出念誦経(略出念誦経・4巻) 不空訳の金剛頂一切如来真実摂大乗現証三昧大教王経(金剛頂大教王経・3巻) 施護〔せご・980~1017・宋代の訳経僧〕 が漢訳した一切如来真実摂経(30巻)があります このうち不空訳は、空海によって請来されて有名ですが 施護訳の1/6の量しかないといいます サンスクリット原典は、施護訳に対応しているので 施護訳が初会の完訳とされています またこのようなことからも 7世紀半ばから終わりにかけて南インドで基本形が成立し 次第に施護訳にみられる完成形に近づいていったと考えられています 金剛頂経は、大日如来が 一切義成就菩薩〔いっさいぎじょうじゅぼさつ・釈迦〕の質問に対し 自らの悟りの内容を明かし それを得るための実践法を説くそうです 悟りの内容を具体的に示したのが金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)で その実践法の中心となるのが 「五相成身観」(ごそうじょうじんがん)だとされます 鉄塔相伝 鉄塔相伝は、真言密教で語られている伝説で およそ以下のとおりです 大日如来が、天上界の1つ 色究竟天(しきくっきょうてん・色界18天の最頂点)の法界宮で 大日経を説き、金剛宮では金剛頂経を説いた 金剛薩埵〔こんごうさった・バジラサットバ 大日如来と衆生を結ぶ菩薩で、チベット仏教ではさかんに信仰〕が 経典を結集して南天鉄塔(なんてんてっとう)に納めた ● 南天鉄塔 南天竺(みなみてんじく・南インド)の鉄塔 この鉄塔を模した塔を大塔といい とくに高野山のものを根本大塔(昭和13に再建)という 大塔は多宝塔に似た二層の塔で密教独自の塔 他に根来寺や成田山のものが有名 根来寺のものは、室町期の1547年頃 高野山のものを模して建立されたもので国宝 釈迦滅後800年頃、竜猛〔りゅうみょう・ 竜猛のサンスクリット名は インド大乗仏教二大教派の1つ中観(ちゅうがん)派の祖 竜樹と同名のナーガルジュナの漢訳であるが 竜樹とは別人ともされ、実在も疑問視されている〕が 鉄塔の扉をあけて 金剛薩埵より両経をさずかり これを竜智(700年も生きたとされ実在が疑問視)に伝えた 竜智は、数百年これを持し、8世紀になって 大日経などを善無畏(ぜんむい)に、金剛頂経などを金剛智に授けた といいます 金剛頂経系の密教が伝わった系譜を示す「付法の八祖」は 大日如来→ 金剛薩埵→ 竜猛→ 竜智→ 金剛智→ 不空→ 恵果(えか・空海の師。中国の僧)→ 空海 となっいて 「伝持の八祖」は、大日如来、金剛薩埵は、人物でないのでのぞき 大日経系の系譜を加え 竜猛→ 竜智→ 金剛智→ 不空→ 善無畏→ 一行→ 恵果(えか・空海の師。中国の僧)→ 空海 となっいます 空海は、自身の著書「教王経開題」で (教王経とは金剛頂経のことでその解説書)において 「この経(金剛頂経)及び大日経は並びにこれ龍猛菩薩 南天鉄塔中より誦出する所の如来秘密蔵の根本なり」 と述べています 要するに、金剛頂経も大日経もどちらも 龍猛が南天鉄塔を開いて、金剛薩埵より伝え受けたということです しかし、金剛頂経の義訣巻上に "釈迦滅後数百年に一人の大徳が鉄塔を開き そこに蔵していた金剛頂経を誦出(じゅしゅつ)した" とあるだけで どの経典にも、大日経の誦出ことが書かれていないのです このため、真言宗のなかにも、鉄塔の相伝には、昔から論議があるそうです また、この話を、歴史的な事実ととらえる立場と この話は、龍猛=竜樹 の内心をさしていて 鉄塔の扉とは「煩悩」を意味し 中の経典は、衆生の仏性であるなどとする立場とが あるといいます 一方、天台密教では 金剛薩埵とは、阿難(あなん)のことであるとしています ● 阿難 アーナンダ。釈迦の十大弟子の一人 釈迦の従弟。老年の釈迦の給仕をつとめた また多聞(たもん)第一といわれ 釈迦入滅の年になされた仏典結集に活躍した そして 金剛頂経は塔内 大日経は塔外によって相伝されたとしています 天台宗によると、大日経を発見した者は 北インドの薪をとる木こりだとしているそうです なお、日蓮は「開目抄」(観心本尊抄とともに最重要の御所)で ≪ 妙法蓮華経と申すは漢語なり。月支(がっし)には 薩達磨分陀利伽蘇多攬(さっだるまふんだりきゃそたらん)と申す 善無畏三蔵の法華経の肝心真言に云く 『曩謨三曼陀没駄南(帰命普仏陀)唵(三身如来)阿阿暗悪(開示悟入) 薩縛勃陀(一切仏)枳攘(知)娑乞蒭毘耶(見)誐誐曩三娑縛(如虚空性) 羅乞叉儞(離塵相也)薩哩達磨(正法)浮陀哩迦(白蓮華)蘇駄覧(経) 惹(入)吽(遍)鑁(住)発(歓喜)縛曰羅(堅固)羅乞叉マン〈牟+含〉(擁護) 吽(空無相無願)娑婆訶(決定成就)』 此の真言は、南天竺の鉄塔の中の法華経の肝心の真言なり 此の真言の中に、薩哩達磨と申すは正法なり。薩と申すは正なり 正は妙なり。妙は正なり。正法華、妙法華是なり 又妙法蓮華経の上に、南無の二字ををけり。南無妙法蓮華経これなり ≫ と、南天の鉄塔にあったのは 「法華経」の題目(南無妙法蓮華経)であったと述べています 要するに、日蓮はなにを言いたいかというと ≪一神教では「神」という存在を求め 浄土教では、阿弥陀仏という存在を求め 密教では、大日如来および成仏の法を求めるが こうした諸宗教が、亡霊を追うかのように 求めるてやまないものの正体こそが じつは、南無妙法蓮華経なのですよ≫ということなのです 五相成身観と五字厳身観 密教では、清浄円満な自己の本質である仏性を満月にたとえ 月輪を描いた掛け軸なんかを観想します 例えば、蓮華の上の月輪(がちりん)の中に 梵字のa(ア)の字を描いた掛け軸を掲げて 観想〔一心に思いをこらす〕する 「阿字観」という観想法があります サンスクリット語(梵語)では aは全ての母音・子音の最初に位置することから 本不生〔ほんぷしょう・森羅万象全て、本初は、空であるゆえ、生滅はない〕 を意味するとされ、阿字観はこの理を悟る観法だといいます 阿吽(あうん)の呼吸の「阿」のこと? そうです 梵字において「阿」は最初の字音であり 「吽」は最後の字音で、阿が口を開いて発する音に対し 吽は口を閉じて発する音です 密教では、阿と吽を、全ての発源と帰着を象徴するとみなします 寺院の仁王像や神社の狛犬(こまいぬ)は、一方が口を開き 一方が口を閉じ、阿吽をあらわしています 阿吽の呼吸は、阿吽を、呼気と吸気にあてた言葉で さらに互いの気持ちや調子が一致することをいいますよね 「五相成身観」とは金剛頂経にもとづくものです ① 自己に仏性があるのではないかと観じる通達菩提心 オン・シッタ・ハラチベイタウ・キャロミ・オーン 〔我、心を浄らかにして知ることをなす〕 という真言を唱え、霧の中に隠れる満月を観じる ② 本来の自己とは仏性であることを悟る修菩提心 オン・ボウヂ・シッタ・ボダハダヤミ・オーン 〔我、菩提心(悟りを求めて修行を行おうとする心 密教では悟りの根源的な心すなわち仏性をいう)を生起せん〕 という真言を唱え、秋の満月をもって自己の仏性を観じる ③ オン・チシュタ・バザラ〔立てよ。金剛〕の真言を唱え 月輪(自己の仏性)の中に、金剛(堅固な智慧・仏智)を象徴する 三昧耶形(さんまやぎょう)が存在すること観じる成金剛心 ④ オン・バザラタマク・カン〔我、金剛を本質とするものなり〕 という真言を唱え、三昧耶形が自己の智慧そのものである と観じ、三昧耶身となる証金剛心 ⑤ オン・ヤタ・サラバ・タタギャタサ・タタカン 〔我、まさに一切如来のごとくなり〕の真言を唱え 仏との同一性を観じ、三昧耶身が転じて本尊そのものになる すなわち仏と自己が入我我入(三密加持)して即身成仏する仏心円満 「五字厳身観」(五輪成身観)というのは大日経にもとづきます 密教では、森羅万象が 地輪・水輪・火輪・風輪・空輪の五輪(五大・輪とは要素の意味) でできるといいます また五輪の種子であるア・ヴァ・ラ・カ・キャは 五仏の五智の種子でもあるとされます そこで五輪を、自己の頂、面、胸、へそ、膝の5ヶ所に配し 自分の身がそのまま仏身であると観じるのが、五字厳身観だそうです 大日如来と毘廬遮那仏 前1世紀~後2世紀の大乗仏教成立期には ヒンズー教の神々やイランの神々が 阿弥陀如来、観音菩薩、弥勒菩薩などとして仏教に取り込まれました 無量光仏(阿弥陀如来)や弥勒菩薩や 日光菩薩(スーリヤ・プラバ)などと同じく 大日如来もイランの太陽神との関連性が言われています ゾロアスター教の唯一神で、光明神でもある アフラ・マズダと近縁だとも考えられています またインドでは、バラモン教時代より 太陽神の スーリヤが信仰されていましたが このスーリヤが、前2世紀頃から 西方イランの影響により力を増し これら(阿弥陀如来、観音菩薩、弥勒菩薩、大日如来など) の仏菩薩を誕生させたともいいます 大日如来の梵名は、マハーバイローチャナ これが大日如来、光明遍照、大光明遍照などと訳されたわけです 大日という漢訳は、大日経を訳した 善無畏と一行(いちぎょう)によるものだそうです 仏でありながら宝冠をいただき 〔胎蔵界大日は髪を束ねて宝冠としている〕 瓔珞(ようらく・首飾)、ひじまき、腕輪を身につけ王者の姿をしていますが これは煩悩即菩提を表すといいます 空海が、長安の青竜寺の恵果(けいか)から 金胎両部の密教の奥義を授かる伝法灌頂(かんじょう)を受けたとき 金剛・胎蔵いずれの場合も、投華(とうけ)した華が 曼荼羅中央の大日如来の上に落ちたといいます 空海の密号〔密教での呼び名〕を遍照金剛というのは 大日如来に由来するそうです 大日如来〔マハーバイローチャナ・摩訶毘廬遮那。マハーは大の意〕に対し 毘廬遮那仏〔びるしゃなぶつ・毘廬舎那仏。略して、廬遮那仏・廬舎那仏〕 というのがいます 毘廬遮那は、バイローチャナの音写です バイローチャナとはもともと〈輝く太陽に由来するもの〉という意味だそうです 毘廬遮那仏は、華厳経の教主で、華厳宗では釈迦如来と同一とされます 法相宗では、毘廬遮那仏を法身(ほっしん)・ 廬遮那仏を受用身(報身)・釈迦牟尼仏を応身としています 天台宗では、法相宗と同じように法報応の三身に配していますが ともに異名であり別体ではなく、所詮、三身即一身であるとしています 真言宗では、毘廬遮那仏は、大日如来(摩訶毘廬遮那)の異名で 大日と同体であり、法身(真理の仏)だとされています 唐招提寺(律宗総本山)の廬舎那仏(約3m。脱活乾漆像。国宝)は 梵網経(ぼんもうきょう)にもとづくもので 光背に化仏(けぶつ)千体が配され(現存は864体) 蓮華座(台座)の花弁一枚一枚に釈迦が描かれているそうです ● 脱活乾漆像 麻布を漆で貼り固めて造形した張子の虎のように中が空洞の像 大まかな塑像を造り、漆に浸した麻布を巻きつけて乾かす これを数回にわたって行い、底(立像の場合は背中)を切って 塑像を壊して取り出す 東大寺(華厳宗総本山)の大仏も 毘廬舎那仏(約14.7m。銅造。国宝)で 蓮華座の花弁には それぞれの世界で説法する釈迦が線彫りされているそうです ● 蓮華蔵世界 華厳経の説く蓮華蔵世界は 華蔵(けぞう)世界・蓮華蔵荘厳世界海ともいい 廬舎那仏が菩薩であったはるか過去より 多くの仏のもとで修行し、飾り浄めた世界だという 華厳経の構想を踏まえ中国で作られたとされる 梵網経〔大乗菩薩戒の聖典・大乗教の律典〕では 蓮華胎蔵世界・蓮華海蔵世界・蓮華台蔵世界などともいう 大地は金剛(ダイヤモンド)でできていて 大地には111個の香水海があり大蓮華が生えている 各大蓮華は20の世界が重なっている 中央の香水海にある世界についていえば 最下が最勝光遍照という世界で 最上20番目の世界が妙宝焔という世界で おのおのの世界に中心となる仏がいる この13番目の世界が、娑婆世界で、毘廬遮那仏が住している 毘廬遮那仏は中央の蓮華座に座し 蓮華には千葉〔千枚の花弁〕があり、千葉1つ1つに千の世界がある 以上の100億世界が、梵網経の蓮華蔵世界であり 100億の世界それぞれに須弥山〔しゅみせん・世界の中心の山。スメール〕 日月、南閻浮提〔なんえんぶだい・人間の住む世界〕があり 釈迦がいて説法している 釈迦は廬舎那仏の変化(へんげ)だとされる 密厳経〔如来蔵(仏性)と阿頼耶識(あらやしき)と密厳を同一と説く〕 などには 大日如来の浄土として、密厳浄土が説かれているそうです 金胎両部の大日が住する世界で 密教では、華厳経の蓮華蔵世界 浄土教の極楽浄土も、密厳浄土の異名だとしているようです 五大明王 真言密教では ① 不動明王 を中央に 東南西北におのおの ② 降三世明王 〔ごうさんぜみょうおう・3面6臂で 足下に大自在天(シバ)とその妃 烏摩妃(ウマー)を踏む〕 ③ 軍荼利明王 〔ぐんだりみょうおう・1面3眼8臂で、蛇が身体にからみつく 軍荼利とはクンダリニーの音写 クンダリニーは、ヒンズー教シャクティ派では シヴァの妃と同一視している大蛇をさす〕 ④ 大威徳明王 〔6面6臂6足。六足尊の名をもつ。身は青黒で火炎に包まれ水牛に乗る〕 ⑤ 金剛夜叉明王 〔身体は青黒で3面6臂。正面は5眼〕 を配し、五大明王としています 天台密教では、金剛夜叉明王ではなく ⑤ 烏枢沙摩(うすさま)明王 〔うすさまみょうおう。2臂・4臂・6臂・8臂のものがあり 身体の色は赤、青、青黒など一様ではなく、火炎に包まれる 不浄を焼き尽くすことから、真言宗や禅宗では寺院の便所などに祀られる ウスサマは、もともとバラモン教の火の神アグニをさしたという〕 を加えます ● 不動明王 不動金剛明王、不動尊、無動尊ともいう 梵名は、アチャラナータ(動かざる尊者の意) 1面2臂で、青黒の全身に火焔を負い 火生三昧〔かしょうざんまい・火のように心を定め動じない境地〕 に入った姿で表現される 早い時期のものは、両眼を見開き 下あるいは上の2牙を同方向に突出するが 時代が下がると、片目を半開きにし 上と下1牙ずつを上下交互に突出する 右手に煩悩や障魔を断ち切るための剣 左手に羂索〔けんさく・苦海に沈む衆生をいけどりにして 悟りの彼岸に送る投げ縄〕を持つ 眷属に、慧光(えこう)・慧喜・阿耨達(あのた)・持徳(じとく)・ 烏倶婆伽(うぐばか)・清浄比丘(しょうじょうびく)・矜羯羅(こんがら)・ 制咤迦(せいたか)の八大童子がいる 図像は、矜羯羅童子と制咤迦童子を脇侍(きょうじ・わきじ)とした 三尊形式が多い 火焔の光背は 怪鳥 迦楼羅〔かるら・金翅鳥(こんじちょう)ともいう 頭や羽が金色で、両翼が336万里もある 変化自在。1日に1竜王と500の小竜を食べ、寿命は8千年という〕が 羽を広げた姿に似るとして「迦楼羅焔」という また、不動明王の威力で 仏敵や魔を身動きできないようにする 密教の修法に、金縛(かなしばり)法がある 寝ているときに身体の自由がきかなくなる 金縛りはこれに由来する
● 大自在天と降三世明王 ヒンズー教の最高神 シヴァは 仏教に取り込まれ 大自在天〔マハーシュバラ・ 摩醯首羅天(まけいしゅらてん)。偉大なる主宰神の意〕 また、自在天 (自在天)や 伊舎那天(シヴァの8相の1つイーシャナから)となり 三千世界(あらゆる世界)の主となる しかし、密教神話では 大日如来に従わず「三世界(三千世界)の主である」 と称した従来の諸天の主 大自在天は 降三世明王によって降伏され 降三世明王に、妻の烏摩(ウマー・パールバディーの別名)とともに 踏みつけられる存在になった 降三世明王は、この密教神話に由来する明王で 三世界の主と名乗る大自在天を降伏させたことから降三世という 後期密教のさきがけに登場した新明王であるという
これら五大明王は、おのおの金剛界の五仏である 大日、阿閦(あしゅく)、宝生、阿弥陀、不空成就の命を受けて 内外(己心と外縁)の障魔を降伏させるため 忿怒の相をあらわした尊格だといいます また、五仏の化身だともいいます 五仏を、① 「自性輪身」〔じしょうりんじん・真理そのものの仏身〕とし 五仏がそれぞれ ② 金剛波羅蜜菩薩 ・金剛薩埵菩薩・金剛宝菩薩・ 金剛利菩薩(あるいは金剛法菩薩)・金剛牙菩薩(あるいは金剛業菩薩) としてあらわれたのが 「正法輪身」〔しょうぼうりんじん・衆生を教化する菩薩としての仏身〕 ③ 不動明王・降三世明王・軍荼利明王・大威徳明王・金剛夜叉明王 としてあらわれたのが 「教令輪身」〔きょうりょうりんじん・ 教化し難い衆生を教令に従い強制的に屈服させる明王としての仏身〕 という≪三輪身≫(さんりんじん)という考えもあります 密教 Ⅳ 密教 Ⅱ |
|